法基通12の5-1-1においては「リース料の合計額の概ね全部(原則として100分の90以上)」としているにも関わらず、(1)と(2)のロでは、解約した場合のユーザーが負担する解約金の額が何故異なるのか。
税務上のリース取引は、リース物件の賃貸に伴う損害の負担がユーザーに転嫁され、すなわち、経済関係上は、現金を金融資本から借り入れ、物件に担保の属性が付与されているのと同様の経済関係にある取引をリース契約条項によって実体化させたものである。

契約上、解約禁止条項があるものとされ、リース契約において中途解約禁止条項がない場合であっても、中途解約した場合に解約に伴う違約金として残リース料を受領できる約定となっていれば、当該契約は、経済関係上、中途解約禁止条項が付された契約と解することができるから、本通達でそのような契約を例示している。疎外労働の評価を物件の減価であるとフィクションし90%という観念上の数字を建て実体化させているのである。

更に、(2)のロにおいて、バージョンアップが行われないときは、残リース料の合計額(リース物件の処分価額の全部又はその一部を控除した金額)を解約金とすることとしていることは、バージョンアップ以外の解約は、賃借人、賃貸人の資本にとって、物件を稼働させるという疎外労働を土台とした利潤を得られないから、現実には、解約できないとみることができる契約であることから、例として規定している。

よって、賃借人が利潤を手放すことを前提に解約したとしても、リース会社の資本においては、賃借人が疎外労働を土台とした利潤を分配することから、物件の賃借に伴う損害を負担することなく、解約禁止条項のあるリース契約と現実には同じであるから、そのような規定になっている。

12の5-1-1 法第64条の2第3項第1号《リース取引の定義》に規定する「これに準ずるもの」とは、例えば、次に掲げるものをいう。(平10年課法2-15「4」により追加、平14年課法2-1「三十二」、平15年課法2-7「四十五」、平19年課法2-17「二十六」により改正)

(1) 資産の賃貸借に係る契約に解約禁止条項がない場合であって、賃借人が契約違反をした場合又は解約をする場合において、賃借人が、当該賃貸借に係る賃貸借期間のうちの未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)を支払うこととされているもの

(2) 資産の賃貸借に係る契約において、当該賃貸借期間中に解約をする場合の条項として次のような条件が付されているもの

イ 賃貸借資産(当該賃貸借の目的となる資産をいう。以下12の5-1-2までにおいて同じ。)を更新するための解約で、その解約に伴いより性能の高い機種又はおおむね同一の機種を同一の賃貸人から賃貸を受ける場合は解約金の支払を要しないこと。

ロ イ以外の場合には、未経過期間に対応するリース料の額の合計額(賃貸借資産を処分することができたときは、その処分価額の全部又は一部を控除した額)を解約金とすること。