[事実関係]
カメラに使用されているフラッシュユニット等の製造・販売を行っている日本法人X3は、平成4年に香港において、上記製品を組立加工して販売するということで法人Aを設立し、株式への出資割合は、X3が98%、X3の役員であるX1及びX2がそれぞれ1%である。
その後、A社の資本は、平成15年中国広東省において設立されたB社との間で来料加工取引契約すなわち、外国企業が、中国に所在する企業に加工を委託し、設備・原材料を無償で提供した上で、完成した製品を全量無償で引き取り、外国企業ー当該事例では日本企業ーから中国企業へは、加工賃のみが支払われるという委託契約を締結し、製品の組立加工工程はB社において行われていた。
来料加工には、中国における関税・増値税の免除と香港における50%の国外源泉所得所得非課税取扱いという税制上のメリットが存在していた。
所轄税務署長は、A社は、タックスヘイブン対策税制上の特定外国子会社に該当するが、X1及びX2につき平成18年分の雑所得、X3につき、平成18年12月事業年度の所得金額を申告していないとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
X1,2,3は、A社は、旧租税特別措置法40条の4項(現措法同条3項)2号及び同66条4項(現措法同条3項)2号の適用除外要件(所在地国基準)を満たしているとし、更正処分取消の訴えを提起した。
東京地裁は、
「租税特別措置法は、特定外国子会社が行う事業が卸売業等である場合には、「非関連者基準」により、主たる事業が卸売業以外の事業である場合には、所在地国基準により、適用除外の該当性を判断することにしている。
措置法等には、卸売業等の各事業については、定義規定は存在しないものの、措置法通達が分類の基準としている日本標準産業分類(総務省)を一つの基準として主たる事業を判断することには十分な客観性、合理性があるというべきである。
同産業分類では、製造業とは、新たな製品の製造加工を行い、且つ、自ら製造した新たな製品を主として卸売する業務を行う事業をいうとしている一方、自らは製造を行わないで、自己の所有に属する原材料を下請工場などにして製品を作らせ、これを自己の名で販売する製品問屋は、卸売業または小売業に分類している。
A社の主たる事業は、B社との来料加工契約により、B社をいわば自社工場ないし自社の一部門として、A社の責任と負担においてカメラ用フラッシュユニット等の製造を行い、これを販売して利益を得ることにあるというべきであって、A社の主たる事業は、製造業であると認められる。
特定外国子会社等が製造業を主として本店所在地で行っているか否かを判断するに当たっては、当該会社の工場建物や機械設備の確保、管理、原材料や労働力等の確保、人事、労務管理、品質管理や財務管理などの状況を総合的に勘案して、社会通念に照らし実質的に判断するのが相当である。
証拠によれば、A社は香港には製造工場を有しておらず、A社の従業員8名に対し、B社の従業員は、400名であり(B社の人件費率は70%)、A社の財務諸表中B社に設置された機械設備等は、全体の93を占めていた等の事実が認められる。
これらの事実によれば、A社は、自社工場の役割を果たしているB社が所在する中国において、製造業の本質的部分である製造行為を行い、A社の資本を投下し、中国の経済と密接に関連して事業活動を行っていたと認められるのであって、A社がその主たる事業である製造業を主として行っていた場所は、本店所在地ではなく、B社が存在する中国であるというべきである。
Xらの主張する、事業活動全般をみて付加価値をより多く生み出している場所がどこであるかを判断する手法は、立法論はともかく現行の措置法が予定するものではない。」とした(東京地判平成24年7月20日)。
[解説]
投融資をした側は、投融資をしただけでは利潤を産み出さない。投融資を受けた側は、架空資本や生産手段はそれを購入しただけでは、既に労働疎外済の購入価格に価値を加えるものではない。
労働力商品を購入し、又は労働力商品をさせて、架空資本労働者に貸し付けたことを土台として利潤が実現するのではない利潤は、交換によって実現するのではない。労働者に架空資本、生産手段を貸し付けて、労働を疎外したことを土台に、労働力商品、商品の出荷前の完成までに利潤に付与される価値が確定する。
架空資本を受け取って架空資本に価値属性が付与されて実体化(法律行為によって社会に価値が実体あるものと認めさせること)される。
子会社の資本は、中国において、労働力商品を購入し、低廉な価値を付し、労働を疎外して利潤を得ているのであるから、製造業を行っているのは本店所在地である香港ではない。
B社は、労働に付された価値の疎外を土台とし、疎外された価値が転嫁された商品の価値を疎外する契約を結び、A社が疎外労働を土台とした利潤の全てを受け取っている。
中国の所得に関する税金を控除する前の利益から利潤の分配が親会社に分配されているから親会社は二重課税ではない。親会社が中国の所得税、法人税を負担する前の利潤から資本に利潤が、国際金融資本に利潤、労働を疎外する権限が分配されて利息、配当の方便が付されているから二重課税の問題は成立しない。
労働力商品を購入することなく、疎外労働を土台とした利潤を得た国際金融資本が日中でフィクションした国債の返済を全額負担しなければならないであろう。
利潤の確定する所在地、国債の負担に、事業の確定については、経済合理性という実体のない観念である逃げ口上、租税回避の目的、法律の目的という実体のない観念、社会通念という実体のない観念と交渉することなく、国債の債務はどの経済実体にあるか、日本産業分類によって二項ないしは三項対立して類型化するのではなく、資本関係、経済関係上の事実関係を調査把握してどの経済実体に利潤が流れ、どの経済実体に利潤の残滓が流れているかによって現実の事業を確定し、国債の返済負担をさせなければならない。