[事実関係]
一般貨物自動車運送及び不動産業を営む同族法人が、死亡により代表取締役を退いた役員の退職慰労金を支給することとし、15年3月期に退職慰労金2億7,000万円を損金算入したところ、更正処分を受けた。
裁判所は、
「創業者として好業績の法人である原告を維持発展させた功績は、極めて大きいものといえるところ、このような事情は、創業者であること等を比較法人の抽出条件とはしない平均功績倍率を3.094と算出し、原告の採用していた功績倍率3.5を近似値として相当としているところ、2法人を抽出する過程で、欠損金が多額であった1法人及び功績倍率のあまりの低さから本来あるはずの退職給与が支給されていないと思われる3法人を除外したことについては、原告と他の同業種、類似の法人の業績、差異及び創業者としての功績を踏まえれば、その判断に相当の合理性があると言える」とした上で、3.5を超えない範囲による役員退職給与については、不相当であると評価することはできないとした(大分地判平成21年2月26日)。
[解説]
売上減、事業廃止の損失は、資本が負担しなければならないから、退職給与算定の基礎となる役員報酬とは相殺できない。リスクは実体のない観念であるから退職給与算定の基礎に盛り込まれないであろう。
現実に処分された担保物があればそれによる経済損失は、退職給与の算定の基礎に盛り込まなければならないであろう。
役員を含む労働者の、国際金融資本と産業資本によって疎外された労働に付与されていた価値を算定し、その一部乃至は全部が、利潤に転嫁されて、当該法人と資本関係のある役員の疎外された労働に付与された価値に付加されている場合、疎外された労働の価値を超える部分の金額は、法人との資本関係に基づいて付加したものであるから、配当ということになるであろう。
報酬は月額は、労働力商品の購入に付与された価値である。不動産が利潤を産むのではなく、賃借している経済実体の労働者の労働を疎外したことを土台に利潤を産んでいる。
資本関係上、生産関係上、これらの面を踏まえて退職給与は算定されなければならず、労働の疎外の過程の組み込まれていない比準法人の財務諸表上の数値の平均値と比較するだけでは十分ではない。