親族が全額投融資したとされる同族法人を登記上退任した代表取締役が、監査役に就任にした事案で、退職金名義の金員が退職所得であるとされた事例がある(東京地判平成20年6月27日)。
[事実関係]
原告会社は、洋品雑貨、呉服等繊維製品の販売を営む株式会社である。原告会社の株式会社登記簿には、16年8月2日付で原告乙は、平成16年7月31日に代表取締役を退任し、且つ、取締役を辞任して監査役に就任した旨の登記がされた。
原告会社は、平成15年8月1日から16年7月31日の事業年度において、退職金4,500万円、土地使用許諾料等500万円の未払金が存在するとして同額を損金算入して確定申告を行った。
退職金は、16年9月24日に支払われた。
乙は15年間代表取締役を務め、取締役を退任後も監査役であること、現代表取締役の父であることをもって法人の経理を否定したことにつき、
地裁は、
「法人税法上、役員に対する退職給与は、損金の額に算入することとされているところ(平成18年法律第10号による改正前の法人税法36条)、ここにいう退職給与とは、本来退職しなかったならば支払われなかったもので、退職に基因して支払われる給与をいうと解するのが相当である。
また、役員が実際に退職した場合であっても、役員の分掌変更又は改選による再任等がされた場合において、例えば、常勤取締役が経営上重要な地位を占めない非常勤取締役になったり、取締役が経営上主要な地位を占めない監査役になるなど、役員としての地位又は職務の内容が激変し実質的に退職したと同様の事情にあると認められるときは、上記分掌変更又は再任の時に支給される給与も、退職給与として損金に算入することが相当である。
本件法人税通達は、これと同様の趣旨を、一般的に、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合を例示した上で、規定したものであると解することができる。
そして、本件法人税通達が具体的に規定している事情は、飽く迄例示にすぎないのであるから、分掌変更又は再任の時に支給される給与を「退職給与」として損金に算入することができるか否かについては、当該分掌変更又は再任に係る役員が、法人を実質的に退職したと同様の事情にあると認められるか否かを、具体的な事情に基づいて判断する必要があるというべきである。
確かに、前記認定事実のとおり、原告乙は、役員の分掌変更の前後を通じて原告会社の発行済株式の35%を所有する筆頭株主であるものの、前記認定事実のとおり、原告会社の発行済株式は、その全額を同居する家族がその出資割合に応じた比率のまま所有していることなどに照らすと、原告会社において、役員が経営上の方針について、その株主の所有割合に応じた影響力又は発言力を有しているとは認めがたい。
また、前述のとおり、原告乙は、原告会社において、役員としてはおろか、従業員としても一切の業務を行っていない状態になったのであって、仮に、
納税者が筆頭株主として会社に何らかの影響を与える得るとしても、それは飽くまで株主の立場からその議決権等を通じて間接的に与えうるに得ず、役員の立場に基づくものではないから、会社における株主と役員の責任、地位及び権限等の違いに照らすと、会社における株式保有割合の状況は、乙が実質的に退職したと同様の事情があると認める妨げにはならないというべきである。
原告が実質的に退職したと同様の事情にあると認められるとしても、法人税に係る所得の計算上損金に算入される費用は、当該事業年度の最終日までに債務が確定しているものでなければならない(法人税法22条3項2号)。
したがって、本件退職給与を本件事業年度の損金の額に算入することができるというためには、本件退職給与の金額が本件事業年度において具体的に確定していなければならないというべきである(なお、法基通9-2-18参照)。
原告乙に支給する本件退職給与の額が決まったとされる平成16年7月31日の直後である同年8月2日の時点で、原告会社の普通預金口座には、本件退職給与の金額を大きく上回る6,725万4,238万円の残高があり、その後、本件退職給与が支払われるまでの間、同口座には、常に、5,146,6211円以上の残高があったのであるから、原告会社は、同年7月31日以降、原告乙に対する本件退職給与を実際に支給しようと思えばいつでも支給することができる状態にあったのにもかかわらず、同年9月24日まで支給されていないことも不合理というべきである。
以上の事実を考慮すると、本件退職給与の金額が本件事業年度の末日である平成16年7月31日までに確定していたと認めるのは困難であり、その金額は、同年9月16日ころに確定したものと認めざるを得ない。
そうすると、本件退職給与の金額が確定したのは、本件事業年度においてではなく、また、その支払がされたのも本件事業年度においてではないことになるから、結局、原告会社は、本件事業年度において本件退職給与に係る金額を損金に算入することはできないというべきである。」としている。
[解説]
司法は役員に経営権があるかのような誤解をしているか、役員に現実には経営権がないことを知りながら、役員が法人を経営しているという洗脳を国際金融資本から託されているとみることができる。
法人に投融資を行って議決権を取得していれば、当該法人の現実の経営権はその経済実体であること、資本関係、経済関係の総和が社会で、社会が分社したものが家庭であるから、親族間を通じて資本関係がフィクションされているのである。当該金員が、乙が法人の労働力に投融資をフィクションして架空資本を付与されたことによる、投融資、労働者への資本の貸出、疎外労働、資本増殖の過程の権利に基づいて支払われたものなのか、使用人にすぎない役員であることをもって、過去における労働力の提供に基づく疎外労働分の支払いに価値が付与されたものなのかを確定しなければならない。
100%の同族法人であっても、資本蓄積の源泉が現実には国際金融資本が投融資している金融機関であれば、名義上同族法人の労働力に投融資をフィクションしているものの、現実には、資本の投融資のフィクション、労働の疎外、利払い、地代を含む配当の支払い、役員を含む使用人報酬について、法人は国際金融資本をして資本関係を源泉にコントロールされた上で、コントロールし処分している。退職役員に支給した金員について、配当に相当する部分の金額が全くなかったとは言い切れるか検討しなければならないであろう。
司法は、当該法人が、資本の投融資のフィクションから、疎外労働、資本蓄積のまでの過程を国際金融資本からの融資を受けているか否か、国際金融資本との資本関係、資本増殖、実体関係の成立の過程についての問題提起、事実確定が完全にすることなく自然、不自然という宗教学によって事実確定をしてしまっている。
労働を疎外されて、それを土台とする利潤が転嫁された商品が経済関係によって疎外された労働の評価を値引かれて引換に得た商品に評価が前貸しされて、返済を待たされ、減価償却に振り替えられ、貸付けをフィクションされた労働力については、労働の評価に基づいて、利潤の額に関わりなく、商品を支給してそれを評価する義務がある。利潤の中から労働力を分け合う利潤の分配ではない。利潤を超える給与の支払義務は、債務を負っている国際金融資本が弁済しなければならないものである。
しかし、当該役員に現実の労働があったか、国際金融資本からの借入のフィクションがあったか否か、借入の評価の実体化された額、借入の法人資本の占める割合によって、役員退職金の属性が付与された当該金員に占める退職給与、利益配当の割合、金額が決まってくるのである。
資本関係が資本の投融資、分配という経済関係を、更に、契約を通じて実体関係を規定することが余儀なくされるのであって、そこに架空資本の付与された経済実体、法人、使用人に意思はない。
労働の評価が確定された後も支給を待たされており、国際金融資本に貸しだされ、労働力に貸付けがフィクションされているのであれば、労働の疎外を土台とする利潤の分配後に、労働力商品が引き換えに得る商品の評価が確定していない、労働力商品の側からみれば、労働力の再生産の評価が疎外されたことを土台とする利潤が確定していないということであるから、当該法人の債務は確定しないということになるであろう。
[関係条文]
(法人税法第22条第3項)
3 内国法人の各事業年度の各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるものの他、当該事業年度の販売費、一般管理費、その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度の終了の日までに債務の額の確定しないものを除く。)の額
三 当該年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
(旧法基通9-2-23)
法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際し、その役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば、次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。
(1)常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。
(2)取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第4号(使用人兼務役員とされない役員)に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。
(3)分掌変更等の後における報酬が激減(概ね50%以上の減少)したこと。
(法基通9-2-18)
退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。
但し、法人がその退職給与の額を支給した日の属する事業年度においてその支給した額につき損金経理した場合には、これを認める。
(旧法人税法36条)
内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給する退職給与のうち、当該事業年度において損金経理をしなかった金額及び損金経理をした金額で不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。