[事実関係]
所得税法上の経済実体である税理士が死亡したことによる、職員の退職金を、共同相続人である子息の事業所得の必要経費に算入したところ、支払債務が確定していにないとして更正処分を受け、審査請求においてもこれが維持された(平成25年7月5日裁決)。
[解説]
全ての事業において言えることであるが、所得の土台となる粗利益が実現しているということは、労働の疎外があったということである。
税理士が死亡したことにより事業が廃止され、それによって退職した職員に退職金を支払う生産関係上の義務がある。
労働力の提供と共に給与の支払義務が実体化し、労働者は労働を疎外され、前貸しされ、支払を退職まで待たされたことになるから労働者に利息を支払わなければならない。
資本、生産手段を持たない労働者は、税理士の死亡により生活ができなくなるから、税理士が死亡した後も生活ができるだけの給与が支給され、価値が付与されていなければならないから、利息を加算してそれを補償する義務がある。
事業承継があり、承継後の経済実体において引き続き勤務したとしても、生産関係は承継前後で全く同じではないし、疎外された労働をさらに待たされることは生産関係上あってはならない。
労働債務は存在し確定しているのであるが、労働者に支払っていないから労働者は退職所得に付与された価値を現実に受け取って、支払手段としたり、消費することを含め労働による経済、生活上の利益を享受していない労働者は、経済上の利益が存在しないにもかかわらず、所得税が天引きされたことになってしまう。
労働債務は、労資の慣行、ブルジョアの所産である社内規則、社会通念という観念によって決まるのではない。
事業の廃止は、社会通念によって規定されるのではなく、廃止決定の段階における資本の有無によって調査され確定する。
未払計上をしても、確定した段階で支払が履行されなければ、経済実体の資本は、疎外労働による利益を得たままであるから、労働債務は実体のない観念ということになると社会に認めさせたのである。
期末賞与の1ヶ月以内の支払であっても、労働を提供する毎に労働債務は実体化し、期末においても支払が待たされ、さらに1ヶ月待たされており、資本関係を土台にして支払の延期にもかかわらず債務が実体あるものとして損金計上をするという特例を社会に認めさせることに成功しただけであって、労働者は支払を待たされているのであるから利息を支払わなければならないのである。
債務の確定があったとしても、未払の関係が続いていることから、共同相続人の事業所得の必要経費には算入することはできないと解されるであろう。