所得拡大税制とは、青色申告書を提出した法人又は個人事業主が給与等支給額を規定の割合等の条件を満たした場合に雇用者給与等支給増加額の10%を法人税額又は所得税額から税額控除(10%。中小企業者等は20%が上限)できるというものである。

その適用要件は、

①雇用者等給与支給額が基準事業年度より一定割合以上増加していること

雇用者給与支給額とは、国内雇用者(役員及びその特殊関係者等を除いた当該法人の国内の事務所に勤務する全ての雇用者)に支給した給与等のこと。

基準事業年度とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度の内、最も古い事業年度の直前の事業年度のこと。

②適用事業年度の雇用者給与等支給額は、前事業年度以上であること

③継続雇用者の平均給与等支給額が前事業年度を上回っていること

継続雇用者とは、適用年度及びその前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者のこと。

所得拡大税制は、搾取企業に利得をもたらすものとなっている。所得拡大税制には、労働時間、労働の強化については何も規定されていない。

各労働の納期を平均給与の増加率よりも高い率で短縮することで、すなわち労働を強化することで、前事業年度と同じかそれ以上の疎外労働による内部留保の蓄積を得ている法人、また、平均給与の増加率よりも高率で労働時間の延長をすることによることで、前事業年度と同じかそれ以上の疎外労働による内部留保の蓄積を得ている法人も税額控除を受けることができてしまう。

短期のパート、日雇いの労働者を平均給与の計算式から除いているから、短期パート、日雇い労働者の割合の高い搾取法人でも税額控除が受けられてしまう。

平均給与、給与総支給額についても、損金算入した金額であるから、未払給与の割合が高い、据え置き期間が長い、疎外した労働の分、すなわち資本が実体のない観念である紙に付した価値も損金に計上している法人資本も、税額控除が受けられ、労働者が資本関係、生産関係を土台に請求することを諦め、時効が成立し、資本が給与の支払義務を免れつつ、補助金を手にするということができてしまうのである。

継続雇用者には、前事業年度に退職した労働者や適用年度に入社した労働者は含まれない。

前事業年度に給与水準が高い労働者を退職させ、適用事業年度に給与水準の低い労働者に切り替えた法人資本にも適用されてしまう。