労働時間要件型という本人の希望と労使合意があれば、法定労働時間を超えて労働した場合の割増賃金支払の規定の適用が除外されると解することができてしまう改定案が、国際金融資本との資本関係に基づいて産業競争力会議の名目で提示されていた。

同会議においては、現行の労働時間制度を、職制上の地位という付与された属性、現実の業務に関係なく、新入社員を含め全ての労働者について、労使の合意があれば適用せずに、割増賃金、残業代なしで深夜休日労働をさせられるというスマートワーク制度の創設が、国際金融資本との資本関係に基づいて提案されていた。

資本、生産手段を持たず、資本を貸し出されている労働者には現実には意思はない。労働者は、資本関係に基づいて提示された労働時間、賃金、労働条件をのまざるを得ないのである。希望、合意という意思は実体のない観念である。

中央銀行の資本を所有した経済実体が資本関係に基づいて、実体のない観念を実体あるものと社会に認めさせることができる。

労働者は労働時間の上限を破ると、出勤停止、降格の処分を受け、資本、生産手段を持たない労働者は、資本の定めた労働時間内でタイムカードを打刻することを余儀なくされている。更に、資本が定めた労働時間を超えたことが明らかになると、虚偽の申告として自由意思に基づくものとして減給される。

残業をしても、休みを取っても、定時で終えても低い価値属性を労働者の賃金に付与し、ロックアウト解雇を行い、法定労働時間規制のない労働を余儀なくされている。その後、幹部候補を労働時間規制の適用外にするという案に変えられたが、ここでも候補という実体のない観念が用いられている。

全ての労働者に候補という属性を付与して、更には内定者にまで候補者の属性を付与して、割増賃金、残業代なしで働かせることができてしまうのである。

既に現実には、現場労働者の数を増やさず人件費を圧縮し、現場の労働をさせてながら、現実には労働者であるが割増賃金、残業代が支払われない管理職の属性を付与して、割増賃金、残業代の支払を資本は免れている。

インターンの名目で賃金を支払わず、更に授業料を課したり、生産過程において避けることができない、貸与された資本の傷を弁償させたり、指導という名で振るわれた暴力による資本の傷を弁償させられたりしている。アーティストには残業代も割増賃金も支払われないと言われるが、メジャーレーベルと契約したアーチストは、国際金融資本に資本を貸し出され、作りたくない曲を作って国際金融資本の資本を増殖させ、欲しくもないドラッグを買わされ、請負の名目で、労働を疎外され、マネージメント料名目で天引きされているという現実を疎外しているのである。