[事実関係]

温泉利用料の名目で支払った金銭について、「送油中の温度低下を防ぐため温泉供給者の送油設備の改善費用に充てる目的で利用者が支出する特別温泉使用料は、無形資産たる温泉利用権の改良のための資本的支出に当たり、水利権に準じて減価償却されるべきもの」とされた事例がある(宇都宮地判昭和48年2月15日)。

[解説]

目的は実体のない観念である。現実に送油設備を改良した場合においてもしなかった場合においても、資本関係、経済関係を土台に取得して社会に認めさせることに成功した温泉利用権について、現金を投下して、生産手段にして貸与して、労働を疎外して疎外した労働を繰延資産に転嫁しているから、資本的支出ということになる。

利用権に追加出資することで、資本関係が強化され、権利が強化され、それを社会に認めさせることに成功し、資本持分に付与され社会に認めさせることに成功した価値属性の上昇により、他の経済実体が買収することが困難になるのである。

資産に価値属性は備わっていないから、資本に転嫁する毎に減価償却をするという方法も現実には現金の支払いを伴わない内部留保であるが、水利権に準じた減価償却が行われるという現実がある。