保証債務の履行と求償権の貸倒れについての裁判例に、下記のような事例がある。
[事実関係]
X会社、連帯保証をしていた代表者Pの借入金19億円について代物弁済したが、その借入金の実質上の債務者はPではなくPの知人亡Mであり、XのMに対する求償権は貸倒れになったことから、代物弁済により消滅した連帯債務保証債務相当額は損金に算入されるべきである旨の主張について、
(1)Pは、Mから、株の買占資金の融資を頼まれ、Aをはじめ金融機関から自己及び親族所有の不動産を担保にして100億円以上もの金員を借入れた上、これを全額Mに貸し付けてきたところ、右19億円についても、Mから追加融資を依頼され、従前の貸付金が回収不能になることを恐れて、融資を承諾したものであって自らの意思と判断に基づいて金銭消費貸借契約書の債務者欄に署名押印しているばかりか更に、X代表者として連帯債務保証人欄に記名押印し、Aとの間で、根抵当設定契約を締結した上、予め用意していた右連帯保証を承諾する旨の取締役会議事録も交付していること、
(2)Pは、Aとの間で、その後数回にわたって右金融消費貸借契約を更新しており、その際、自己が主債務者とされている点に関し異議を述べたことは一度もなかったこと、
(3)Xは、Mの死亡後、自ら積極的にAとの間で、本件代物弁済契約を締結した上、係争事業年度の決算報告書に本件代物弁済契約に係る固定資産譲渡駅及びP個人に対する仮払金を計上し、これを前提とする確定申告をしていること等に照らすと、
右19億円の主債務者はPであると認めるのが相当であり、したがって、XはPに対して求償権を有するのであるから、代物弁済契約により消滅した連帯保証残債務相当額を損金に算入することは許されないというべきである。
(大阪地判平成8年8月28日)。
[解説]
意思は実体のない観念であるから事実確定の基礎とはならない。Mは、金融資本との資本関係から、架空資本を購入して、投融資を受けて、労働を疎外して疎外した労働を資本に転嫁せざるを得なかった。金融機関を所有する金融資本との資本関係から、担保名目で資産を金融資本に現実に所有され、Pは現金を貸し付けて、労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁し、固定資本を引き渡して現金商品を取得せざるを得なくさせられた。意思や意思を含む判断は介在しない。
金融資本との間に根抵当権設定契約、法人は金融資本と法人の資本との間に法人が引き受けた連帯保証について生産関係に基づき取締役会議事録を作成していること、Pは金融資本との間の金銭消費貸借契約を更新していることからPと金融資本、Xの連帯債務は、金融資本との資本関係から、実体あるものと認めさせることに成功することを余儀なくされた。