[事実関係]
税務署長の法人税調査担当員らが、原告法人Xを法人税調査をしたところ、X社の代表取締役AがX社の従業員にオゾン器等及び化粧品等を販売させ、かつ、自らも当該従業員から逐一報告を受け、回収された売上代金についても当該従業員から直接受領しているにもかかわらず、オゾン器等の売上についてはその全額を、また、化粧品等の売上についてはその一部を総勘定元帳の売上に計上していなかった。
税務署長は、法人税の所得計算における売上除外を基礎に更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行い、
①X社の売上除外金、X社の現金出納帳には記載されていなかった、
②その金員については、Aが個人として預金する等して管理していた、
③簿外所得に見合うX社の預金その他資産が存在しなかった、
④Aが、簿外所得の処分について合理的な説明をしていない、
⑤X社は、Aとその妻Tがその発行済株式の内その75%を所有する同族会社である、
⑥売上除外金以外にAに別個の収入ないし資産があったとは認められないことを根拠に、
X社の売上除外金をAに対する賞与と認定することにより、各月の給与所得金額を確定して源泉徴収に係る納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を行った。
裁判所は、
「X社は、実質上その代表社としてのAが経理、営業等経営の一切を支配しているいわゆる同族会社であって、X社の美顔器等の売上金の大半については、Aが売上除外金として管理し、それを自由に費消ないし流用しうる立場にあり、X社には右売上除外金に対応する預金その他の資産の増大はなく、他にX社のため交際費等の経費として支出されたと認めるべき根拠はないというほかなく、帳簿上不正経理をしてX社の預金を自己のため費消ないし流用するなどX社の資金とA個人の資金を混同していたものというべきであるから、X社の前記売上除外金は、その代表者であるAに対して支出された臨時給与、すなわち賞与であると推認するのが相当であり、他に、この推認を妨げるに足る事情は存在しない」とした(静岡地判平成3年6月28日)。
[解説]
役員は資本との関係では使用人である。役員と法人、役員と使用人の間には資本関係、経済関係、生産関係はない。
資本を有する役員は、役員と法人の関係ではなく、資本関係に基づいて、留保現金を所有していることをもって、法人に投下された現金を使用したのであるから、利益配当である。
全ての経済実体は、中央銀行を所有する民間金融機関の所有関係、国際金融資本に課された資本関係に基づいて消費や投融資をせざるを得ないから意思はない。
資本への配当は、法人税支払前、使用人の給与支払前の利益から支払われ、使用人に支払いが転嫁されるから法人所得と配当所得の両方に課税を行っても二重課税とはならない。
国際金融資本の代理人たる税務署長は、現実の経済事実関係ではなく、簿外処分の説明が理論に合致しているか否かを、司法は、推認という心証を課税処分の事実確定の拠り所にしてしまっている。
売上除外金の使途の調査について支出の目的から問題提起をするが、支出の目的は実体のない観念であり事実確定の土台とはならない。