[事実関係]

 遊郭「別館一番」を業としていた原告法人Xは、昭和32年4月1から施行された売春防止法により、昭和33年2月28日限り廃業のやむなきに至った。かかる遊郭の建物は訴外Mの所有名義であるが、昭和30年Tが同人より買い受けて所有しており、X社はTから借り受けて使用していた。

これに附着した構築物はX社の所有であり、資産としてその価格を財務諸表に計上していたが、昭和31年度において当該造作の評価換えをした。

所轄税務署長は、かかる損金算入を否認して更正処分を行った。

 裁判所は、

「X社主張のとおり昭和32年度で造作の評価減損金算入が行われ、税務署長がこれを否認した事実は当事者間に争いがない。

法人税法施行規則17条の2は、有形固定資産の評価換えは非常に特殊な場合にのみ許されるとの会計理論を前提として、右理論上許される場合にのみ法人が評価損益計上することを予想して設けられたところ、同条1項による資産評価減が企業の健全な維持発展の必要からではなく会計理論をはなれて脱税ないしは租税回避の目的に乱用されたきらいがあった事実は認められる。

しかし、税務署長主張のように同条3項新設以前においても、同項と全く同一の内容の解釈が一般になされていたこともまたそのように解釈することが正当であるとするに足る根拠が存在していたことも認める認めるに足る証拠は本件審査にはなんら表れない。

したがって、昭和34年の同条3項新設以前においては、同条1、2項の明文により法人は、自由に評価損の計上をなし得たものと解すべきである。

しかしながら、右認定のとおり右規定は会計理論上評価換えが許される場合に法人が評価換をなすことを予想して規定されたものであり、したがって評価換が会計理論上不適当で会計原則に違反し通常なされない場合に行われ、その結果税負担の軽減が生じることとなり税負担の公平を失するときは、同規定を適用できないものと解釈するのが相当である。

何故ならば、法人税法施行規則が有形固定資産の減価償却制度のほかに評価減制度を採用したのは、原価主義を徹底するならば資産の評価損益を計上する余地はないのであるが、保守主義の見地からして実際に価格が低下した場合に評価損を計上し時価に応じた帳簿価格とすることは企業の堅実を計る意味からも理由があり、税法上も右の見地から従来の不明確な取扱いを廃止して評価減の損金算入の制限を設けたものと解される。

客観的評価が困難であり、かつ、通常長期間使用される有形固定資本について再三評価減を行うことは、企業の健全性を害し却って企業の健全性を計る本来の目的に反することとなるからである。

X社が昭和31年度及び32年度に造作の評価減を決算に計上したことは当事者間に争いがない。右造作は有廊用の諸設備であるタイル工事、電気工事、畳建具等の模様替造作を言うのであることが認められる。

そして、X社は、昭和31年11月末日当時盛業中であって右造作部分の格段の時価低下はみられなかったこと、昭和32年12月末日当時には既に昭和33年3月以降の強制廃業後転業する意思もなく、事実同年2月に解散しており、昭和32年末当時としては資金需要もなく、他から借財して会社債務を増加させ、或いは増資する意図もなかったこと、昭和30年ないし32年度は順次売上純益が増加し、純益の全額が社内留保となっている事実が認められ、他に右認定に反する証拠はない。

そうすると、右の各評価減の計上は、企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性のない場合になされたものであって、企業会計原則の一般原則6に違反し、会計理論上不当なものと解するのが相当である。

もちろん、売春防止法の公布により昭和33年4月1日以降いわゆる遊郭が強制的に廃業させられるに至ったことは公知の事実であり、右認定に用いた証拠によると右造作部分は右廃業によりその価値を失うことは認められるところであるが、右減価は同法公布の昭和31年5月24日以来予測されたところであり、評価換よりかはむしろ法人税法施行規則21条の2、同法施行細則7条の2によって耐用年数の短縮を行なうべきであり、またこれを行いうるのに国税長長官の承認を受けていなかったのであるから、右事実をもって前記認定を覆すに足るものとすることはできない。

そうすると、税務署長が昭和31年、32年度分の本件審査決定において、右評価減の損金算入を否認した原処分を正当と認めたことは適法であると言わなければならない」とした(大阪地判昭和38年9月12日)。

[解説]

 資本の所有である女が貸し出され、資本関係から、経済実体が売春婦を購入されることを余儀なくされてきた。

商品や疎外された労働が資本に転嫁された後の資本名義の役務と引き換えに現金商品を取得する段階を経て付与される価値属性が、各経済実体が資本関係から課せられた現金留保義務から取引をしている経済実体との経済関係が変更する前よりも低く付与される。

労働者に資本の損失が転嫁され、労働の再疎外、搾取が行われてきた。資本関係とそれを土台とする既存のリターンから性産業が再編成され、労働の疎外、疎外された労働の資本への転嫁の過程の再編成が、法により実体あるものとされた。

性労働は疎外され、更に搾取され、売春だけでは生存、生活できず、退職して、また、売春と併せて生殖による労働力再生産を余儀なくされるのである。

造作には価値属性が備わっておらず、所有しているだけでは、現金留保を産まない。生産手段にして貸与して労働を疎外して疎外した労働を資本に転嫁するのである。

造作の使用目的は実体のない観念であり、造作には価値属性は備わっていない。現実の生産手段の貸与、労働の疎外、疎外された労働の過程によって資産計上され、償却を実体化させる。

既存の紙幣発行権、準備金制度の所有関係、既存の国際金融資本との資本関係から、現金、架空資本があって、架空資本、生産手段を担保名目で国際金融資本に所有されることで、現金を貸与したり、生産手段、架空資本を手放して現金商品を得たり、生産手段を貸与したりして労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁せざるを得ない資本関係があることから、全ての経済実体は、債務を返済し得ないとすることはできない。

よって、生産手段として貸与して、疎外された労働を転嫁できるから、固定資本は、その評価減を実体あるものとすることができないとされる。

既存の紙幣発行権、準備金制度の所有関係から、全経済実体の現金留保は疎外されて価値属性が付与し直されて、租税という名目で回収されるのである。

産業の廃止、再編成についても、租税法にしても、法は資本関係、資本関係を土台とした既成のリターンを土台に規定され、法律行為により経済関係の疎外と再規定が実体あるものと社会に認めさせることに成功する。立法趣旨と交渉することや現象面からとらえることにより現実の資本関係、経済関係、生産関係から乖離するのである。

需要、借財、増資の意図、脱税、租税回避の目的、評価損の予想、減価の予測、企業の堅実を計る、転業の意思、影響、可能性,、廃止が確実は実体のない観念であるから、事実確定の土台とはならない。