[事実関係]

 プラスチック製造業に係るK商店の名義上の取引は、Y化学(被告法人)の東京営業所の所得を公表帳簿から、東京地区の得意先に対する売上を、一旦K商店に対し小売価格の25%~30%相当額で販売し、K商店から得意先に小売価格の15%~20%の利益を見込んだ価格で販売するという手段により、除外していた。これにより、、K商店の利益相当額をY化学の所得から除外して簿外のY3の妻からの借入金の返済資金としていた。

 第一審は、以下のように認定した上でK商店は単なる名義人であって、その取引は、被告人Y3の妻の取引ではなく、被告人Y化額の取引であると認められると判示した。

①Y3(被告法人の代表者)の妻はその設立につき出資もしておらず、その所得につき確定申告もしていないこと、

②得意先からY化学に対する注文に基づき注文を出荷し、販売代金は全額Y3名義預金に振込入金されたこと、
③K商店名義の取引の伝票、帳簿記載、請求の事務はY化学の従業員Fが行っていたこと。

 控訴審は、

弁護人が「証拠の評価に当たっては、物的証拠を重視すべきであって、押収されている納品書控、領収書控、仕切書控などの書類によれば、商品の流通過程がY化学→S商会→K商店→得意先となっているから、右の一連の流通過程を虚偽のものと認めることはできない」と主張する点に対し、

控訴審は、

「税法上の所得の帰属は、実質所得者課税の原則に基づき、取引の名義や形式とその実質が異なるときは、その取引により生ずる収益を実質的に誰が享受しているかによって定めるべきである。

事実関係からすると、前記の納品書控、領収書控、仕切書控などの書類に現れているK商店名義の取引は、Y化学の東京地区の売上利益を秘匿して右の所得に対する法人税の課税を免れるために、右の名義で取引をするという形式を仮装したものであって、その収益はY化学が実質的に享受しているから、K商店の売上金額はY化学に帰属すると認めるのが相当である。

右の所論は採ることを得ない」と判示した

(広島高裁岡山支部判平成5年5月12日)。

[解説]

 貨幣は所有主を持たないから、現金、すなわち資本が経済関係を規定する。Y化学に投融資しているのは、その代表者Y3とその妻であり、その妻に出資しているのは金融資本である。

金融資本との資本関係から、Y3所有のY化学は、生産し、労働を疎外し、疎外して、疎外した労働を商品に転嫁して商品を売って現金商品を取得し、現金商品に価値属性を付与せざるを得ず、給与、利子配当租税支払前の現金留保の中から、法人の資本、法人の資本たる経済実体に投融資した金融資本に利子配当を支払うという関係が形成されている。

全ての法人、経済実体は、資本関係から法律行為を媒介に実体あるものと社会に認めさせることに成功させることを余儀なくされている。

よって、法人税法上の利益、所得を負わされるのはY化学ということになる。 本件については帳票と現実の資本の投下から現金留保までの過程が異なっていることから仮装ではあるが、課税を免れるためという目的は実体のない観念であるから、仮装の事実確定の土台とはなり得ない。