[事実関係]

 控訴人は、昭和61年8月期及び昭和63年8月期ないし平成4年8月期に係る法人税について、被控訴人が行った更正処分及び重加算税賦課決定処分につき、控訴人が、控訴人所有のホテルの売却に際して、買主から何ら裏金を受領していないのに、これを受領したとしてなされた本件各処分は、事実誤認に基づくものであり、その調査も控訴人代表者から事情聴取したのみで、これには重大かつ明白な瑕疵があるとして、本件各処分が無効であることの確認を求めた。

 原審は、「本件調査は、裏金という簿外所得の存在を調査したものであるから、当該所得に直
接関係する帳簿について調査がなされている以上、仮に違法としても、重大なものとは言えない。

A係官は、数回にわたり控訴人代表者との面接の申込みをしたが、控訴人は病気療養中であった等の理由により、秘書を通じて申込みを拒否していたもので、被控訴人代表者との事情聴取を怠っていたものではないから、調査が一見して明らかに不十分であるとは言えず、重大かつ明白な瑕疵があってとは言えない」とした(東京地判平成11年11月12日)。

高裁は、原審の判決を維持して、控訴を棄却した(東京高判平成12年3月13日)。

[解説]

 処分の根拠となる経済関係の実体がない。全ての処分に効果はないが、法律行為を媒介に実体があることを事実確定に瑕疵があったとしても社会に認めさせてしまっている。

瑕疵があったか否かは一見しただけで、すなわち現象や法則のみからは事実確定はできない。

処分の土台となる事実関係を全体化したかどうかから事実確定が行われると解される。

課税側は、原始記録、帳簿書類を見て、面接をして事実関係を全体化することなく処分を行ったのであるから、課税処分は取り消されて、課税処分をするしないの事前手続からやり直す義務がある。