[事実関係]

 外国に子会社Bを設立してその名義で外航船を取得したとする原告法人が、その取得に租税特別措置法の特定資産の買換えの特例を適用した金額、当該外航船の減価償却費、当該外航船の取得に要した諸費用を損金に算入して確定申告をしたところ、税務署長は更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

 裁判所は、

「外国子会社の目的は、キプロスにおいて法人となり、、かつ、本件船舶の船主となり、キプロス船籍を維持することである。そのような目的を達するために、外国子会社は法人成り後、本件造船契約の発注者となり、船籍登録において本件船舶の所有者となり、これを維持するために手数料を支払っている。

本件船舶がI組合とJ協会の労働協約適用がある日本船籍の船舶であってはならず、キプロス船籍のような外国船籍の船舶であることを必要とするので、原告自らが船主になることができない。ロシア航路においてキプロス船籍が有利であると事情もあった。

法人としての実体を外国子会社を設立し、必要な資金を提供するが、本件船舶を所有していることにはならないようにすることが原告の意思である。以上を総合すると、B社は法人としての実体を有すると認めるのが相当である。

本件船舶の購入は、もともと原告自身が海外事業の進展を図るために始めた計画であり、原告は資金面で外国子会社に協力しているから、実質的な経済上の負担は原告に帰しているものといえるが、法的な帰属の観点からは、法人格を有する外国子会社が、原告の経営意図を実現するために、所有権を含めた本件船舶に係る法律関係の帰属主体となっているというべきである」とした(横浜地判平成13年10月10日)。

[解説]

 特定資産の買換えの特例は、産業資本が国際金融資本から、資本関係を土台に、生産手段を購入し、国際金融資本から投融資を受けることにより、利子配当の土台を蓄積するという既存の過程を土台としている。紙幣発行権、準備金制度を所有しない経済実体の現実の経済関係、経済過程を土台としていない。

キプロス子法人は、日本親法人の資本との資本関係により、親法人が借入れた金銭により、生産手段を購入することを余儀なくされ、外国の労働者の労働を疎外して、疎外した労働を資本に転嫁し、労働力が再び疎外されて、現金商品と交換され、価値属性が付与されて労働力再生産を余儀なくさせている。よって、キプロス子法人の現金留保の所有は、現実には、親法人の資本であるが、キプロス子法人は経済実体があり、資本関係により、法律行為によって社会に認めさせることを余儀なくされている。

経済実体は意思を持たないから、生産手段を所有せざるを得ないのであって、所有主、経済上、法律上の帰属主体とはなりえない。

船舶に所有されている経済実体はどれかである。子法人の収益、現金留保が、親法人を通じて、親法人の資本に配当されている。親法人の資本を所有する国際資本は資本関係を土台とした法律により課税を免れているという現実がある。

配当所得は、現金商品を貸与して、投融資先の労働を疎外し、資本に転嫁ているのであって、親法人が現金を源泉に現金、架空資本以外の生産手段を購入し、親法人の労働力を疎外し、資本に転嫁したことを土台としているのではないから、原価、販売管理費が実現しない。

司法は、実体のない観念である外国子法人の目的、原告の意思、資本の現金留保義務のみを土台とし、現実の経済実体間の資本関係、経済関係、生産関係を疎外した船籍要件の趣旨と交渉して販売管理費の計上ができる、できないについて事実確定をしてしまっている。

司法は、現実の資本関係、経済関係を疎外して船舶の所有の目的と交渉して船舶の所有について事実確定をしてしまっている。