パワーハラスメントについて、下記のような裁判例がある。「被告の対応は、雇用契約の相手方である甲との関係で、被告の社員が養成社員に対する優越的立場を利用して養成社員に対する職場内の人権侵害が生じないように配慮する義務(パワーハラスメント防止義務)としての安全配慮義務に違反しているという他ない。したがって、この点に関し、被告には、雇用関係上の債務不履行がある。そして、同時に、このような被告の対応は、不法行為を構成するほどの違法な行為である(津地判平成21年2月19日)。

「職員の安全の確保のためには、職務行為それ自体についてのみならず、これと関連して、他の職員からもたらされる生命、身体等に対する危険についても、市は、具体的状況下で、加害行為を防止するとともに、生命、身体等への危険から被害職員の安全を確保して被害発生を防止し、職場における事故を防止すべき注意義務があると解される」(横浜地川崎支判平成15年3月25日)。

「被控訴人の中傷発言があったことを前提としても、本件面談の際の控訴人乙の発言態度や発言内容は、感情的になって大きな声を出し、被控訴人を叱責する場面が見られ、従業員に対する注意、指導としてはいささか行き過ぎであったことは否定し難い。すなわち、控訴人乙が、大きな声を出し、被控訴人の人間性を否定するかのような不相当な表現を用いて被控訴人を叱責した点については、従業員に対する注意、指導として社会通念上許容される範囲を超えているものであり、被控訴人に対する不法行為を構成するというべきである」(広島高松江支判平成21年5月22日)。

パワーハラスメントは、国際金融資本の産業法人、中央銀行を所有する民間銀行の資本関係を土台に行われる。国際金融資本に所有された法人の資本は、資本関係に基づいて、労働を疎外して、資本に転嫁して利子、配当、租税、保険の支払いの土台を作らざるを得ない。資本、生産手段を持たない行政機関、役員、部課長をはじめ使用人は、資本関係、生産関係に基づいて労働せざるを得ない。国際金融資本の所有関係に基づいて、生産関係を通じて課せられた競争に応じ生産手段の購入を増やし、投融資を受け、疎外された労働を増やさざるを得ず、労働者を削減して、残された労働者の労働過程を延長させ、疎外された労働の割合を増やし、資本を蓄積せざるを得ない。パワハラという手段により、退職させること、労働過程の延長、サービス残業を余儀なくさせる。

労働者は、労働をしない資本に代わって、労働者に課せられた義務、生活の土台となる経済ではなく、資本の課せられた現金留保義務、経済に基づいて労働を余儀なくされている。国際金融資本との資本関係から、資本、労働者は、現実に、生存、労働力商品再生産、産業資本再生産を義務付けられている。資本、生産手段を持たない労働者は失業すれば、生活の土台を失う。資本は、パワハラを用いて労働をさせ、退職を余儀なくさせることは、生産関係上認められない。 労働者の生活の土台となる労働を妨げることになるのであるから、経済、労働に基づく問題提起を妨げることになるから、資本には、パワハラそのものを用いない生産関係上の義務、パワハラの土台を形成しない生産関係上の義務がある。 司法は社会通念から許容範囲について言うが、社会通念は社会に基づき、社会は経済に基づき、経済は資本を源泉に形成される。社会通念に基づくことは資本に基づいてパワハラの事実確定を行うということであり、労働の現実、資本に課せられた生産関係上の義務からみて問題である。