基本給に加え一定の残業代を支払うこととする、定額残業代の支給についての契約を労働者と締結する法人の資本家が存在する。月の標準残業時間を設定し、その分は毎月一律の手当とする制度となっている。
現実の労働が標準残業時間を超えた場合には定額残業代を超える支払いをすることを、資本家は、免れているのである。資本家は、労働者に標準残業時間に達した段階でタイムカードを毎日押させたり、法定労働時間分と残業時間分を明確にせず支給するなど巧妙になっている。
労働者は、生産関係上、それを土台とする契約上残業するしないに意思はない。労働者は、生活の土台となる経済に応じて労働過程を規定することは、生産関係上、それを土台とした契約上できない。
生産関係上、生産関係を土台とする法律関係上、資本家は現実の残業労働分につき、生産量、売上高に関係なく賃金を支払う義務がある。
裁判例は、「本件請求期間に原告らに支給された前記の歩合給の額が、原告らが時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、この歩合給の支給によって、原告らに対して法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきであり、被告は、原告らに対し、本件請求期間における原告らの時間外及び深夜の労働について、法37条及び労働基準法施行規則19条1項6号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務があることになる」としている(最判平成6年6月13日)。
現実の労働を疎外して付与した価値属性は、土台となる生産関係、現実の労働がなく、労働力商品と交換した現金に付与した価値属性は、労働力商品がした残業についてのものを支払ったと認めさせることに成功しないのである。 労働者は、現実の残業労働時間、タイムカードを標準残業時間に達した段階で押すように言われたことを記録しておくことが重要となる。