[事実関係]

 請求人は、不動産仲介業を営む同族法人であり、昭和64年1月1日から平成元年12月31日までの事業年度の確定申告を行ったところ、原処分庁は更正処分を行った。

更正処分の経緯は次のとおりである。

①請求人は、平成元年1月10日にA株式会社との間で、A社が所有する土地及びその土地の上に平成2年3月30日に竣工を予定している建物に関する売買の専任媒介契約を締結した。A社と○○国に本店を有する株式会社Bは、平成元年7月31日に本件建物の建築請負契約及び本件土地の売買予約又は停止条件付売買と解すべき契約を請求人の媒介により締結し、同日、不動産売買契約書と題する契約書を作成した。請求人は、本件専任売買契約に基づきA社から、平成元年8月7日に仲介手数料総額24,000,000円の半額に当たる12,000,000円を受領し、本件事業年度の決算においてこれを前受金として経理した。しかし、原処分庁は、本件受取手数料を本件事業年度の益金の額に算入した。

 審判所は、

「本件専任媒介契約は、本件土地及び同地上に建築予定の本件建物(未完成建物)に関する売買の媒介を委託する旨の契約であったことが認められるから、本件売買契約が本件専任媒介契約の対象となる売買契約であることは明らかである。

売買契約締結当時に目的物たる建物が存在しないとしても、当該建物が契約物として特定可能であり、履行期においてその履行が可能である以上、当該建物に関する売買契約は有効に成立するものと解するのが相当である。

これを本件についてみると、本件契約書の物件の表示及びその添付資料の建築図面、仕様書等により、本件建物は売買契約の目的物として特定可能であり、履行期においてその履行が可能であるから、本件売買契約は当初から有効に成立したものというべきである。

確かに、履行の前提としてA社において本件建物を完成させる必要がある点で、上記契約部分が請負的側面を有することは否定しがたい。しかし、本件売買契約は、本件契約書の表題が不動産売買契約書となっているばかりか、その内容においても、A社はB社に対し、売買代金全額の支払を受けるのと同時に完成した本件建物及びその敷地である本件土地の所有権を移転することを約し、B社がこれにその代金を支払うことを約する旨の合意が明確になされている。

したがって、本件建物に関する契約部分が、前述のように請負契約の側面を有するとしても、それをもって、当該契約部分が売買契約でもなく、建築請負契約であるということはできない」とし、

本件売買契約は売買予約又は本件建物完成を停止条件とする停止条件付売買契約であるかどうかについて、「本件契約書には、本件売買契約が請求人主張のような契約であることをうかがわせる条項は見当たらず、他に上記主張を認めるに足りる証拠はない」とした。

 審判所は、「前記の他、本件売買契約の効力が本件建物完成時まで発生せず、又は、その発生を阻害するような特段の事情を認めるべき資料は存しない。

以上検討したところによれば、本件売買契約は、本件専任媒介契約の締結の対象となる売買契約(本件土地及び同土地上に建築予定の本件建物の売買契約)にあたり、請求人の本件専任媒介契約に基づく媒介に係る役務の提供は、本件売買契約の締結により完了していると認められ、しかも、本件売買契約の効力は、前述のとおり、特段の事情の存しない本件においては、本件売買契約が請求人の媒介により成立した平成元年7月31日に発生したと認められる。

その結果、請求人が上記媒介に対する約定報酬の一部として平成元年8月7日にA社から受領した本件受取手数料12,000,000円は、本件事業年度の益金の額に算入すべきであり、したがって、上記のとおり更正した原処分は適法である」とされた(平成3年6月5日裁決))。

[解説]

 建設業法人の資本家が労働を疎外して建物に疎外した労働を転嫁して蓄積した現金留保を土台に、不動産仲介業法人の資本家が所有する労働力商品の労働を疎外し、資本家名義の、建設業法人の資本家に提供した労働に転嫁し、現金商品と交換して、建設業法人の資本家の所有する労働力商品の価値属性を疎外することを余儀なくさせて、現金に価値属性を付与する。

仲介法人名義の労働は、経済実体間で土地建物と現金商品を交換した後、所有権移転登記が行われる段階で現金商品と交換される。

売買契約によって、建物を引き渡すことは義務であり、建物は目的物ではない。不動産は現実には担保名目による国際金融資本の所有であり、紙幣発行権の実体関係を土台とした現金留保、回収義務に基づく再投融資義務により、建設業法人の建物引渡義務の履行段階において引渡義務の履行ができるから、売買契約は実体あるものとして社会に認めさせることに成功するとされてしまっている。

A社が土地建物を引渡し、現金商品と交換し、B社が現金商品を支払うことは義務であり、意思はない。売買契約が実体あるものと社会に認めさせることが、本件建物完成段階まで実現せず、実現を阻害する原因となる事実関係はないとされた。国際金融資本は、オフショアに土地建物を売却し、現実には配当である現金商品を交換により取得し、架空資本を源泉に生産手段を購入させ、労働を疎外し、現金留保させ、現金留保を土台に労働力商品の価値属性を疎外して利子配当を支払わせて現金留保を得る。