[事実関係]
原告は、昭和62年4月期及び昭和63年4月期の各確定申告において、昭和60年4月に取得したマンションの減価償却につき、本件建物に係る建設工事の内、鋼製建具工事、木製建具工事、硝子工事、内装工事等の畳敷物及びユニットバスは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第1に掲げる「器具及び備品」に該当するとして、本件建物とは別個に5年ないし15年の耐用年数を適用して償却限度額を計算して減価償却費を各期の損金の額に算入して申告した。
裁判所は、
「本件建具等は、本件建物と物理的又は機能的に一体不可分な内部造作であり、かつ、本件建物と一体となって、その効用を維持増進する目的が認められる。
現行の固定資産の耐用年数は、効用持続年数という考えを基に定められているが、これは、その固定資産の本来の用途、用法により現に通常予定される効用をあげることができる期間を想定し、かつ通常考えられる維持補修の費用を期間的損費とする、という前提に立っているものである。
通常の効用とは、固定資産の素材、構造、用途、用法などから、その資産がある予定された利用条件のもとに使用される場合において、通常予定される効用をあげることができる期間を、現在の状況によって、客観的、技術的に想定してみた、その意味においての効用を指し、また、通常の維持補修とは、固定資産の通常の効用が平常的に維持確保されるために加えられる、通常必要と考えられる修繕を指す。
ところで、有形固定資産の形状、構造などは、種々雑多であり、固定資産の大多数のものは、数種、数十種、場合によっては、より多数の単体を組み合わせて出来上がっている複合体であるが、右耐用年数についての効用持続年数という考え方によれば、複合体資産については、まず、固定資産としての本来の効用をあげうるか否かの基準で、減価償却の単位に分解し、単位資産とされるものについて、投下された支出を、資本的支出と修繕費の区分をして、右効用持続耐用年数という考え方に基づく耐用年数が、具体的に算定されるのである。
耐用年数省令別表第一においては、建物、建物附属設備、構築物、船舶、車両及び運搬具、工具並びに器具及び備品が資産別に掲げられているが、これらは、右のような社会的な最小効用の観点から特定された償却単位資産であり、このような社会的な最小効用の観点から、建物は、単位資産とされているのである。
したがって、建物の耐用年数は、社会的な最小効用の観点から画された建物に通常考えられる維持補修を加える場合において、その建物の本来の用途、用法により、予定されている効用をあげることができる年数を基に算定されるものである。
建物の耐用年数は、建物本体の他に、内部造作(建物附属設備に該当するものは除く)を総合して算定した上、更に、建物の構造及び用途の違いを勘案して、具体的な建物の耐用年数に差を設けており、住宅用なら住宅用というように用途にふさわしい内部造作を想定して算定されているものと認められる。
このような建物の耐用年数算定の趣旨からすると、耐用年数省令別表第一所定の建物附属設備に該当しない建物内部造作の内、当該建物と物理的・機能的一体となったものについては、建物の耐用年数が適用され、他方、構造上建物と独立・可分であって、かつ、機能上の建物の用途及び使用の状況に即した建物本来の効用を維持する目的以外の固有の目的により設置されたものについては、同所定の器具及び備品に関する耐用年数が適用されるものと解される。
すると、本件建具等は本件建物と物理的又は機能的に一体不可分な内部造作であり、かつ、本件建物と一体となって、その効用を維持増進する目的を有するものであるから、いずれも耐用年数省令別表第一に掲げる器具備品には該当せず、本件建物の耐用年数が適用されるものと認められる」とした。
(広島地判平成5年3月23日)
[解説]
効用なる価値属性は備えていない。所有しているだけで自然に発生するという効果が発生することはありえない。 固定資産には機能という属性は備わっていない。固定資産には本来の用途、用法という属性は備わっていない。通常とは実体のない観念である。
原因なく現金留保が実現することはありえない。資本関係を土台に課せられた現金留保義務から、生産手段にして貸与して労働を疎外して、疎外した労働を固定資産に転嫁して実体あるものとして社会に認めさせることに成功させることを余儀なくさせられている。
建具は、現実に、建物がなくて建物とは別個に生産手段にして貸与して労働を疎外してきたかによって建物か器具備品となるかが規定される。
物理は減価償却を実体あるものと認めさせた原因となる生産手段の貸与、労働の疎外、疎外した労働の固定資産への転嫁という現実の現金留保の過程を疎外することである。
目的は実体のない観念であって、固定資産は目的を備えていない。設置の目的は実体のない観念である。効用持続年数は、実体のない観念であって、現実の現金留保過程から乖離したものである。 減価償却にしろ、減価償却費以外の販売管理費で計上するにしろ、原価に計上するにしろ、当該資産を生産手段にして貸与して労働を疎外して固定資産に転嫁しなければ計上できないのであるから、設置や使用の目的に応じてではなく現実の生産手段にして労働を疎外して固定資産に転嫁する過程に応じて計上できるのである。
修繕後の現金留保の過程が、取得の段階のものが現金留保を蓄積してきた過程と同じものであることが、維持管理である。
国際金融資本との資本関係から課された現金留保義務に基づいた、現実の現金留保過程を疎外した減価償却の規定の趣旨と交渉して司法は事実確定をせざるを得なくされている。