[事実関係]

 訴外M工業は、K金属(原告法人Xが後に吸収合併した法人)に対し、同社がM工業に対し負担している債務3,596万円の内、2,596万円について債務免除をしたところ、税務署長は、本件債務免除に係る金額をK金属の昭和40年度の益金として所得金額を計算して更正処分をした。

原告は、本件債務免除は、倒産したK金属の資産負債の整理の一環として、同社の負債の減少、欠損金の填補のために、M工業を含むK金属の債権者集会の協議によってされたものであり、その行為の実体は欠損填補のための資本減少に準ずるものであって、法人税法22条2項にいう資本等取引に該当するから、本件債務免除に係る金額の内K金属の欠損金に充当された部分は、同年度の益金にはならないというべきであると主張し、このことは、企業会計原則が資本填補を目的とする債務免除益をもって資本剰余金とし、利益剰余金としていないことからみても明らかであると主張して、提訴した。

 裁判所は、

「原告法人は、本件債務免除はK金属の負債の減少、欠損金の填補のため債権者集会の協議を経てされたもので、資本の減少に準ずるものであるから、本件債務免除に係る金額はK金属の昭和40年度所得金額の計算上益金に計上すべきではないと主張する。

しかしながら、債務免除は、その動機ないし目的のいかんを問わず、法人税法第22条第4項にいう資本等の金額の増加又は減少を生ずる取引に該当しないことは、明らかであるというべきである。また、一般に公正妥当と認められる会計処理の規準を要約したものと考えられる企業会計原則は、企業本来の活動に基づく利益以外の財産の増加は、これを広く資本とみる立場から、資本補填を目的とする債務免除益を資本剰余金に区分しているけれども、元来、法人税法においては、このような資本剰余金は資本等の金額には含まれない(同法第2条第16号)のであるから、債務免除が同法第22条第4項の資本等取引に当たることはない」とした。

(東京地判昭和50年5月6日)

[解説]

 債務免除により、国際金融資本から課せられた現金商品との交換義務により債務者側の労働力商品の労働が疎外済みである金銭債権を放棄した分が債権者側の資本家により債権者側の所有する労働力商品に転嫁されて、債務者は現実には現金留保している。

そのことから、課税の土台となっている。動機や目的は実体のない観念であるから、課税の土台となる事実確定の土台とはならない。現金留保たる利益は、企業本来の活動による利益という属性は備わっていない。

課税についての法律の規定は予め存在していたのではない。土台となる資本関係、生産関係、経済関係が存在するのである。また、一方で、国際金融資本は、資本関係を土台にした現金留保、回収義務から、会社更生や民事再生に伴う債務免除益を非課税にして、投融資による資本関係のある法人を生存させて、現金を生産手段にして貸与し、労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁して、利子配当を徴収しているという現実がある。