[事実関係]

 原告は、平成6年12月期の確定申告において、原告法人の代表取締役Aが債務超過であるとして、Aへの貸付債権については、法人税法基本通達2-1-25に該当するとして、平成6年1月から同年12月分までの貸付金残高についての受取利息の合計額1億7,603万2,646円を受取利息から減算し、所得金額の計算上、これを算入しなかった。

原告は、平成7年12月期においても、Aが前事業年度同様債務超過の状態にあるとして、本件貸付金債権に係る受取利息を収益に計上しなかった。

 税務署長は、Aの平成6年12月31日、平成7年12月31日における資産・負債の状況は、上記通達にいう債務超過の状況にないとして受取利息1億7,603万2,646円を平成6年12月の収益に加算し、受取利息1億5,368万6,919円を収益に加算して更正処分及び過少申告加算税の賦課決定を行った。

 裁判所は、

「Aの支払利息について検討するに、Aの負債は専ら原告からの借入金及びその未払利息であり、右借入金については明確な弁済期の定めがあるとは認められず、Aは、原告の株式の75%を超える株式を所有し、かつ原告も代表取締役の地位にあるオーナー経営者である上、原告その他も同族会社の株式以外に市場で容易に処分可能な高額の株式を保有しているほか、土地等の不動産等を相当所有している等の事情を勘案すると、Aが本件貸付債権の利息すら支払不可能な経済状態にあるとはにわかに認められない。

そうすると、Aが本件貸付金債務の利息を支払わないことについて客観的にやむを得ない事情があるとは認められず、実質的に、同人が同法人税基本通達の想定する継続的な支払能力の欠如の状態にあるとと認めることはできないというほかない。

また、その他の要件として同通達(1)は、その他①「支払いの督促にかかわらず支払われていないこと、②直近1年以内に最近発生利子以外に利子について支払いを受けた金額が全くないか極めて少額であることをその適用要件としているところ、原告はAに対して督促しておらず、また、原告は本件貸付金につき平成6年中に3億3,063万0,161円の返済を受けていることも認められるから、本件ではこれらの適用要件を満たしていないことになる」とした(鹿児島地判平成11年11月29日)。

[解説]

 現金や貸付債権や土地が価値属性を産むのではない。当該事例においては、貸付債権を現金商品を交換して取得した現金に低い価値属性が付与されたことによる無償部分の金額から収益、現金留保が実現するのではない。

貸付債権と現金商品の交換において、各々が引渡しの義務がある資産に付与された価値属性は、現金を生産手段にして労働を疎外して、疎外した労働を資本に転嫁して、現金商品と交換し、現金商品に交換段階における国際金融資本の資本関係を土台とする実体関係に基づく現金留保、回収義務から付与された市場価格である。

貸付債権を引き渡す義務を履行したのである。紙幣発行権のない法人の資本家は、金融資本から投融資を受けていることによる金融資本資本関係に基づき課せられた現金留保義務から、架空資本を購入せざるを得ず、金融資本との資本関係が存すれば、土地は現実には金融資本の所有となっている。

当該法人の資本家は、法人に現金を投下し、投下した現金を源泉に、現金を生産手段にして貸与して労働を疎外して資本に転嫁している。現金留保の実体から現実には利息が支払い得ない経済関係にないとされた。

Aは、架空資本を所有する原告法人の資本家から現金の投融資を受けうる資本関係、経済関係にあった。

債務者は返済するしないに意思はない。督促は、債権者が国際金融資本に資本関係から課せられた現金留保義務の履行過程に応じて請求せざるを得ないから、債務者の現金留保義務と必ずしも関係があるわけではない。

客観という観念や法の想定といった実体のない観念によって規定されるのではなく、現実の経済関係によって支払いができるか否かが規定される。

通達のいう直近1年以内に発生利子以外の利子について支払いを受けた金額が全くないか極めて少額であるということは、現象面を拠り所としており、現実の経済実体を土台としていない。利子は自然発生するのではない。

利子は、資本関係を源泉に、生産手段の貸与、労働の疎外、疎外された労働が資本に転嫁されるという過程により実体化を余儀なくされる。現実の利息収受と市場価格の差額は、役員は意思はないから役員という地位に基づいているのではなく、資本関係によるものであるから株主の配当ということになるであろう。