[事実関係]
原告法人は、987万1,523円で土地を譲渡した。税務署長は、本件土地の時価が1,965万6,965万円であることから、本件取引は低額譲渡であるとの理由を付して、更正処分を行った。
原告は、当該土地は借地権が存するので、時価は借地権控除後の金額であるとして、更正処分取消の訴を提起した。税務署長は、借地権があることを認めた上で、時価は3,029万7,646円であり、同金額から借地権割合40%を控除した1,817万8,588円であるとして、更正処分を適法であるとの主張を行った。
原告は、本訴における税務署長の主張は理由の差替えであり許されない、更に、借地権を認定した上での本件土地の更地価額は時価よりはるかに高い価額である旨を主張して、更正処分が違法であると主張している。
裁判所は、
「本件において、税務署長は、更正通知書の附記理由中で、本件土地の時価(更地価額)を1,965万6,965円と評価していたのに対し、本訴の主張では、右時価を上回る3,029万7,646万円であると主張するものであるが、共に本件土地の受贈益の計上漏れをを益金に算入するという内容に変わりはなく、課税要件事実の基本部分は共通であり、被告の主張を認めても、原告の訴訟上の防禦活動に実質的不利益を与えることにならないから、被告の本訴における主張は許される。
原告が提出した鑑定書によると、取引例4件中1件は、競売による取引事例であり、また、取引事例の内、1件は、土地及び地上建物を一括して売買の対象とした事例であり、その点を考慮すると、原告鑑定書は、その取引事例の選定方法において合理性を認めることができず、その結果得られた建付地価格についても、信用性に疑問がある。他方、被告が提出した鑑定書においては、特段不合理な点は認められない。
原告鑑定書が、借地権割合決定に当たり採用した2件の取引事例の内、1件は、田の売買事例であって、借地権者に底地買受の事例ではなく、合理性には疑問があるといわざるを得ず、借地権割合についても相当なものとして採用することはできない。
他方、被告鑑定書について検討すると、借地権割合決定の過程、方法等に不合理な点は認められず、借地権割合の鑑定の結論は信用するに足りるものということができる。
以上検討したところに基づき本件土地の底地価額を算定し、右底地価額から、原告が原告代表者から本件土地を譲り受けた価額を差し引いた額を原告の受贈益と認定した本件処分は、いずれも、原告の所得金額の範囲内でされたもので、適法なものと認められる」とした(宇都宮地判平成4年2月12日)。
[解説]
底地、田に価値を産む力は備わっていない。現金を土地に投下して生産手段にして貸与して、労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁する。
現金商品と交換する資産の引渡義務の価額、借地権は、国際金融資本の資本関係を土台とした現金留保、回収義務から規定され、紙幣発行権を有しないその他経済実体の経済関係を疎外した、交換段階での市場価額であることを余儀なくされるのであるが、現金商品に付与された価値属性の内、受け取らなかった部分から収益、すなわち現金留保が実現するのではない。
現金の投下から資本に転嫁され、更に現金商品と交換される過程において、資本関係が異なれば、現金留保、実現の過程が異なるし、生産手段の貸与の過程が異なれば、現金留保、実現の過程は異なる。課税は、労働者の現金留保が資本家を通じ国際金融資本への現金集中する過程であることに基づく理由付記の義務から、理由の差し替えはできないと解され、理由の差し替えが行われるということは、事実確定の全体化をしていないことであり、原処分の理由は実体がなかったということになる。
労働者の現金留保の疎外、国際金融資本への資本集中の過程に鑑みれば、更正理由を知っているか否かという観念に関係なく、理由附記義務があり、理由の差替えや追加はできないものと解される。米国においては、税務調査における更正処分案に同意した場合でも更正処分の説明をすることが必要であるとされている(Saltzman,p8-115)。更正処分に納税者が同意したか否かは実体のない観念であるのである。