[事実関係]

金型販売業を営む同族法人である原告が行った確定申告につき、原告の元代表取締役Sが昭和59年5月30日に死亡して原告法人を退職したことにより、原告が同年8月30日にSの遺族に対して、退職給与金2,822万831円を支出したところ、税務署長は、このうち金1,755万円を超える金1,067万831円は法人税法36条所定の「不相当に高額な部分の金額」に当たると認定し、更正及び過少申告加算税賦課決定をした。

裁判所は、旧法人税法36条、旧法人税法施行令72条について、

「右各規定の趣旨は、法人の役員に対する退職給与が法人の利益処分たる性質を有している場合があることから、業務従事期間、退職事情、比較法人の退職支給状況等に照らして一般に相当と認められる金額に限り必要経費として損金算入を認め、右金額を超える部分は利益処分として損金算入を認めないことによって、個々の退職給与の実体に即した適正な課税を行おうとするものであると解される」とした上で、

「平均功績倍率方式は、判定法人と同種の事業を営み、かつ、事業規模が類似する法人で役員退職事情が同じものにおける役員退職給与支給事例を抽出調査し、右事例における退職給与の額を役員退職時の最終報酬月額及び在職年数を乗じた結果の数値で除して功績倍率を算定し、その平均倍率と判定法人における功績倍率を比較検討することによって、判定法人の退職給与の額の相当性を判断するものであるところ、役員の最終報酬月額は、退職間際に当該役員の報酬が大幅に下げられたなどの特段の事情がない限り、役員在職中における法人に対する功績の程度を最もよく反映しているものであり、功績倍率は、最終報酬月額と在職期間以外の退職給与金額算定に影響を及ぼす一切の事情を総合評価した係数であると考えられるのであるから、平均功績倍率方式は、そのような最終報酬月額報酬と功績倍率を用いて前記政令の規定所定の各考慮要素を考慮し、判定法人の退職給与と比較法人の退職給与支給事例との適切な比較検討を行うことができるものであるということができ、比較法人の退職給与支給事例の抽出が合理的に行われる限り、法令の規定の趣旨に合致するものであるというべきである」とした(名古屋地判平成2年5月25日)。

[解説]

課税側の課税の根拠とする売上、所得、総資産は、既に労働を疎外済みで資本の源泉となる現金の投下、生産手段の貸与、労働の疎外、資本への転嫁、労働力商品への租税、利子、配当支払の転嫁して、現金商品と労働力商品を交換し、現金への価値属性の付与して搾取の土台を再生産を余儀なくさせるという、生産関係の過程が明らかにされていない。退職給与を含む給与に関する問題提起の土台となる給与支給の段階、退職までの現実の生産関係の過程が明らかにされていない。 比較法人の資料の摘示は帳簿記載事実の否定の根拠とはなり得ないであろう。