[事実関係]
税務署長は、平成元年10月2日に死亡退職したNの役員退職給与として原告法人が損金算入した3,500万円の内、330万円を超える3,170万円は、旧法人税法36条及び旧法人税法施行令72条に規定する過大な役員退職給与に当たるとして3,170万円を原告法人の所得金額に加算して更正処分等を行った。
裁判所は、
「そもそも、同一経営者の功績があって、実質的経営の一体性、継続性がある場合、個人営業の時代の勤続年数を当該法人における在職年数に加算するという原告主張の方法は、次のような問題があるので採用できない。
法人税法施行令72条は、『当該役員のその内国法人の業務に従事した期間』と規定し、判定法人の業務に従事した期間に照らして相当性を判断するとしている。役員退職給与は報酬の後払いという要素と功績評価という要素が含まれるが、判定法人がこれを評価して支出するのであり、右金額の内判定法人の損金に算入することが相当な金額を計算するために在職期間をその基準とするものである以上、右規定を文言どおり適用すべきである。
また、原告法人が引き継いだNの個人時代、N木材、S木材におけるNの功績については、通常は、同人の報酬や、原告に事業規模に表れているということができるから、比較法人の選定に当たり、同種、同程度の事業規模、退職した役員が創業者である事例に限定したり、適正な最終月額報酬を認定することによって評価するほかない。
実際、原告主張のように、法人設立以前の経営期間を在職年数に加算することになると、右設立前の経営期間がそのまま直接原告法人に対する功績として反映されることになるうえ、平均功績倍率法を前提とする以上、比較法人が法人設立前の経営期間を在職年数に加算していないから、適切な比較が困難になる。
よって、平均功績倍率法を適用する場合の在職年数は、判定法人の業務に従事した期間は1年6か月であるから、端数月を切り上げて、在職年数を2年とするのが相当である。
これに基づくと、Nは肝硬変、肝細胞癌により死亡しており、同人の死亡は業務上の死亡ではないから、弔慰金の相当な額は、認定したNの適正な報酬月額41万2,500円の6か月分の247万5,000円となる。
そうすると、原告が弔慰金として損金経理した500万円の内、247万5,000円を超える252万5,000円については、死亡退職に起因して支給される役員退職給与であると認めるのが相当である」とした(高松地判平成5年6月29日)。
[解説]
弔慰金名目で支給された現金の弔慰は実体のない観念であって、現実には、労働が疎外されて、現実の労働と労働力商品に支給され、搾取の土台の再生産を余儀なくされてきた現金に付与され、実体あるものと認めさせることを国際金融資本との資本関係から余儀なくされた価値との差額分を構成するものである。
元入金を投下した経済実体とその家族間に資本関係が存する。元入金を投下した経済実体は、労働を疎外して、資本に転嫁し、現金商品と交換して、現金商品に価値属性を付与する。生活費名目で支給された現金に価値が付与され、国際金融と紙幣発行権を持たない各経済実体に課せられた現金留保義務から、それで搾取の土台の再生産を余儀なくされるという過程が採られず、元入金を投下した経済実体から、投融資を受けて、国際金融との元入金を出資した経済実体との資本関係から課せられた現金留保義務、元入金出資者との資本関係から、元入金を出資した経済実体に閉じ込められ、搾取の土台を再生産することを余儀なくされる。
元入金を投下した経済実体から労働を疎外された実体がある場合には、生産関係の継続していた過程の内の、所得税法上の経済実体に勤務していた部分も損金に算入されるが、元入金を出資したことによる資本関係を土台に、生活の土台となる現金留保義務から、経済実体の現金留保を処分したのであれば、退職金の土台とすることはできないであろう。
一体性、継続性という属性は備わっていない。生産関係の終了する過程が、同じ現金投下を源泉にした、資本蓄積という経済過程にあるか否かによって、退職給与の土台となるか否かが規定される。期間の経過が退職給与を規定するのではない。
現実の労働と労働の疎外による資本への転嫁の過程が規定するのである。評価の問題とするが、金融資本の既存の資本関係を土台とする実体関係に基づく現金留保、回収義務から帳簿記載事実を否定するのであるから、事実確定の問題である。現実の労働が疎外され、資本に転嫁する毎に生産関係上支払わなければならない給与が退職の段階まで資本家に前貸しすることを余儀なくされている。
支払が待たされた分の賠償する生産関係上の義務が資本家には存するのである。功績倍率が法人設立前の勤続分に基づいたものとする見解も存在しうるが、国際金融資本との資本関係から改定された功績倍率が現実の労働とその疎外分に基づいたものとは言い切れず、功績倍率に法人設立前の勤続分も含まれているという見解は実体がない。