[事実関係]

 請求人は、請求人が販売する住宅を施工する子法人であるH社の発行済株式の全部を保有している全部を保有しており、平成19年3月期の期首における保有株式は600株で、1株当たりの帳簿価額は50,000円であった。

請求人は、取締役会を開催してH社の増資並びに減資に関する件の承認可決されたことに基づき、H社の増資において、発行株式1,000株の全てを1株当たり50,000円で引き受け、平成19年3月日に50,000,000円を払い込んだ。

請求人は、平成19年3月期において、上記H社の増資に伴う株式の払込日と同日付で、関係会社事業支援損失金として関係会社株式の帳簿価額から上記増資の金額と同額の50,000,000円を減額したが、平成19年3月期の法人税の確定申告書においては、同額を所得の金額に加算することにより、平成19年3月期の所得の金額の計算上、損金に算入しなかった。

請求人は、H社の発行済株式の全ての株式を保有しており、保有株式数は、1,600株(帳簿価額の合計は、80,000,000円)、その1株当たりの帳簿価額は増資前と同じ50,000円であった。

請求人は、平成20年3月期の法人税の確定申告において平成19年3月期に所得の額に加算した50,000,円の内、平成20年3月期末におけるH社の資本金の額と純資産価額との差額に相当する金額35,415,613円を、請求人が保有するH社の株式に係る有価証券評価損として帳簿価額の評価換えをし、平成20年3月期の所得の金額の計算上、損金の額に算入した。

 審判所は、

「原処分庁は、本件株式評価損を損金の額にできないことの理由として、本件債権計画の3年を経過した後に本件株式評価損を計上すべきである旨を主張し、請求人は、本件増資の後1年を経過した平成20年3月期においても有価証券の評価換えとして、本件株式評価損の損金の額への算入がなされるべきである旨を主張している。

法人税基本通達9-1-12は、原則として親会社が子会社に増資をした場合、法人税法施行令68条1項2号ロに掲げる事実はないものとする旨定め、この場合には有価証券評価損の計上を認めないとしており、本件増資を原則として計上が認められない場合に当たる。

しかし、同通達は、但書において「増資から相当の期間を経過した後において」法人税施行令68条1項2号ロに該当する事実が生じたと認められる場合はこの限りではないと定め、評価替えによる帳簿価額の減算額について有価証券評価損の計上を認めることとしている。相当の期間とは、増資払込後においてその業況等の推移を見る期間ということであるから、通常少なくとも1~2年を要すると考えられるが、例外的には客観的に明確な事情があれば、1年未満となる翌期でも評価減が認められる場合もあり得ると考えられる。

平成20年3月期の損金計上時期は本件増資から1年が経過していること、またH社は、その資産の状況が悪化し、翌期も回復の見込めないとして本件再建計画を見直したことなどの事情によれば、本件においては、必ずしも本件再建計画の3年を経過した後でなければ本件株式評価損を計上できないとするのは相当ではなく、請求人が損金算入した20年3月期において法人税法施行令68条1項2号ロの要件が存在するかなどを検討して本件株式評価損の損金の額の算入の可否を検討することができるというべきである。

よって、原処分庁の当該主張はこの限りで採用することができない。本件増資に係る株式取得直後におけるH社の1株当たりの純資産額は、16,862円と認められ、平成20年3月期の終了の日における1株当たりの純資産価額は、14,568円となる。

つまり、平成20年3月期の終了の日におけるH社の1株当たりの純資産価額は、請求人が株式を取得した時のH社の1株当たりの純資産価額の本件増資後における金額を約13.1%下回っていることとなり、資産状態が著しく悪化したことの具体的判断基準である「おおむね50%相当額」を下回っていない。

したがって、H社について、その資産状態が著しく悪化したことの具体的判断基準である「おおむね50%相当額を下回っていない。したがって、H社について、その資産状態が著しく悪化した事実が生じていたと認めることはできない」とした(平成22年5月24日裁決)。

 

[解説]

 架空資本には価値属性は備わっていない。時間という属性に応じて、架空資本に投下された、すなわち労働を疎外済みの架空資本と交換された労働を疎外済みの現金に付与された価値属性が増殖するのではない。客観は実体のない観念であり、現金も架空資本も測定の尺度ではないから、観念により規定することはできない。

「資産状態の著しい悪化が認められるものの回復の可能性については、事業年度終了の時までの発行法人の業況等や既に行われた事実のみではなく、事業年度終了の時までに既に具体的に実行することが決定されていた翌事業年度以降の計画等がある場合には、これについても含めた上で判断することが相当であるとし、回復の見込みがないとはいえない」とした裁決がある(平成21年4月2日裁決)。

回復の見込みというのは実体のない属性である。

子法人は、増資という手段により、投融資を受けることにより、投下を受けた現金を源泉に、現金を生産手段にして貸与し、又は資産と労働力商品を購入して、資産を生産手段にして貸与し、労働を疎外して、疎外した労働分の価値属性を架空資本や商品に転嫁し、現金商品と交換し、交換により取得した現金商品に価値属性を付与することで、現金留保は実体あるものと社会に認めさせることに成功することを余儀なくされ、親法人の資本家は投下現金を回収できないということは有り得ないということから、子法人へ投融資したことによる債権の貸倒れや架空資本の価値属性を低下させて現金留保することを実体あるものとすることはできない。

紙幣発行権のない資本家からは、国際金融資本の既存の所有関係、それを土台にした所有に関する実体関係に基づく現金回収義務から投融資を行い、金融機関、行政機関との生産関係を使用して、利子、配当、課税名目で現金を回収している。