[事実関係]

 審査請求人は、E国法人であるF社からの仕入について、第三者間取引と認識して確定申告を行ったところ、原処分庁は、当該取引は、移転価格税制を定める租税特別措置法66条の4第1項に規定する国外関連取引であり、請求人から独立企業間価格を算定するために必要な帳簿書類等が遅滞なく提示又は提出されなかったとして、同条7項の推定規定を適用して更正処分を行った。

 審判所は、

「請求人は、独立企業間価格の算定方法としてL社とM社間の取引(比較対象取引)がF社と請求人間の取引(国外関連取引)の比較対象となり得るとし、再販売価格基準法により算定することが合理的であると主張するが、比較対象取引は取引段階及び市場の面で国外関連取引と異なっており類似性を有するものとは認められない。

調査担当職員が提示又は提出を求めた資料は、F社の財務諸表及びF社との取引価格の算定資料であるところ、これらは、独立企業間価格の検討を行う上で基本となる資料であると認められ、国外関連者が有する帳簿関係書類等であっても、租税特別措置法66条の4第7項の帳簿書類等に含まれ、独立企業間価格の算定に不可欠な帳簿書類等が遅滞なく提示又は提示されない場合には、同項の推定規定の要件を充足すると解されるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。

本件国外関連者取引がF社と請求人との間のモーターの売買取引であるという観点から、本件各更正処分における比較対象法人は、いずれも本件国外関連取引の対象資産と同様のモーターを販売している業者が選定されており、F社と同種の事業を営む法人と認められる。

比較対象法人は、その事業規模、取引段階及び取引形態においても本国国外関連者取引と同様と認められ、事業規模その他の事業内容が類似したものが選定されていると認められる。

本件各更正処分においては、租税特別措置法66条の4第7項を適用し、比較対象とした事業に係る売上総利益の額の総原価の額に対する割合を基礎として原価基準法の方法により算定した金額を独立企業間価格とし、請求人がF社に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるとして、国外移転所得金額を算定していると認められる。

請求人は、比較対象法人が日本の親会社と国外関連者取引を行っている法人であり、移転価格税制の趣旨から判断して、関係会社間の取引価格は独立企業間価格は独立企業間価格ではないので、関係会社間取引価格に基づいて独立企業間価格を推定することは矛盾する旨主張するが、推定規定の適用に当たって、租税特別措置法施行令39条の12第11項では、独立企業間価格の算定方法を定めた原価基準法に係る同条7項のように、非関連者間取引で構成されなければならないとの要件はなく、また、独立企業間価格の算定の基礎となる比較対象法人の通常の利益率の算出においても不合理な点は認められないから、請求人の主張には理由がない」とした(平成18年9月4日裁決)。

[解説]

 財務諸表上の利益からは、現金の投下を源泉に、現金又は購入した資産を生産手段にして、労働を疎外して、その分を資本に転嫁して現金留保を蓄積し、又、更に、労働を疎外済みの資本と労働を疎外済みの現金商品を交換するという過程を経て算定されたことが開示されていない。

資本関係の有無によって経済関係、経済過程、現金留保義務、経済を土台とする実体関係は異なる。司法は、請求人法人の資本関係、経済関係、資本関係を全体化せずに、比較する法人の資本関係、経済関係、生産関係を全体化しないで、国際金融資本家の資本関係、それを土台とした実体関係、現金留保義務、現金回収義務から規定された法の趣旨とのみ交渉している。

課税による労働者の現金留保を疎外して国際金融資本家の現金留保の集中をさせるという過程に鑑みれば、推定ではない、他に採り得る全ての手段を尽くして事実関係を確定する義務があり、理論に合致しているか否かではなく経済実体に基づいた独立企業間価格を算定する義務がある。