[事実関係]

 訴外子法人Xは、平成9年1月にタイ王国において設立された外国法人であり、原告法人がその株式の95%を所有する原告法人の子法人である。

内国法人である原告は、X社に、平成9年1月から平成10年11月までの間において6回にわたり、利率を年2.5ないし3.0%の固定金利、貸付期間を各10年とし、利息の支払は年1回の後払、元本の返済は貸付の4年後から1年毎に7回に分けて均等に返済するとの約定で、総額1億2,822万5,000タイバーツの貸付を行った。

X社は、原告に、平成10年3月期において、第1回貸付に係る利息として75万タイバーツを、、平成11年3月期においては、第1回貸付及び第2回貸付に係る利息として合計138万タイバーツを、平成12年3月期には、第1回貸付ないし第6回貸付に係る利息として合計311万3,884タイバーツを、それぞれ支払った。

X社は、原告に、平成11年10月5日に、第1回貸付及び第2回貸付に係る元本を、平成12年11月27日には、第3回貸付ないし第6回貸付に係る元本を、それぞれ全額返済した。

 課税庁は、第1回貸付及び第2回貸付の受取利息の合計額138万タイバーツの円換算額440万2,200万円(原告が当該各受取利息について益金とした際の円換算額と同額)を国外関連取引の対価の額とし、独立企業間価格たる金利に基づき算出した金額の合計2,202万5,698円との差額について更正処分を行った。

裁判所は、

「本件のような貸付取引に関する独立価格比準法の同等に方法とは、国外関連取引に係る同一の通貨を、国外関連取引と貸付時期、貸付金額、貸付期間、金利の設定方式(固定か変動か、単利か複利か等)、利払方法(前払か後払か等)、借手の信用力が同様の状況の下で、貸し付けた取引がある場合、又は、その同一の通貨を上記貸付時期等に差異のある状況下で貸し付けた取引があり、当該取引について、その差異により生じる対価(利息)の額の差を調整できる場合に、その対価の額又は調整を行った後の対価の額に相当する金額をもって、国外国連取引に係る独立企業間価格とする方法をいうものと解される。

これらの方法は、いずれも比較の対象となる非関連者間の取引が具体的に実在することを前提とし、その取引における実際の対価の額を基礎として独立企業価格の算定を行う方法である。

租税特別措置法66条の4第2項の解釈として、国外関連取引と比較可能な非関連者取引が実在しない場合で、市場価格等の客観的かつ現実的な指標により国外関連取引と比較可能な取引を想定することができるときは、そのような仮想取引を比較対象として独立企業間価格の算定を行うことも、「準ずる方法」及びこれと「同等の方法」として許容されていると解されるから、推定値を用いることが直ちに違法となるものではなく、また、課税庁の主張する利率が現実性のある合理的なものと認められ、実際にその利率を用いた取引が存在したとまでは断定できないにせよ、現実にあり得る利率として比較可能性を認めることができる。

課税庁側の主張する独立企業間価格の算定方法が租税特別措置法66条の4第2項の規定に適合し、これにより算出される独立企業間価格の数値にも合理性が認められる場合には、これよりも優れた算定方法が存在し、算出される数値にもより高い合理性が認められることについての主張・立証がない限り、課税庁側の主張する独立企業間価格に基づく課税について、これを違法ということができない」とした(東京地判平成18年10月26日)。

[解説]

 属性たる時間の経過によって、利息が発生するのではない。現金の投下を源泉に、現金を生産手段にして貸与し、労働を疎外して債権額すなわち資本に転嫁することを経済過程において継続することで貸付先において現金留保は蓄積する。

資本家は、既存の資本関係、それを土台にした紙幣発行権の取得についての実体関係により、貸付先の現金留保を回収する。

投下済みの現金と労働を疎外済みの現金商品が交換され、労働を疎外済みの現金に価値属性が付与される。

後付の方便が利息である。

労働を疎外して現金に転嫁済みの現金同士は、交換できるから、現金は全て商品である。

現金は価値属性は備わっておらず、労働の疎外により蓄積されるものであり、交換される商品であり、測定の尺度ではない。

現金の交換は、取引当事者の一方のみ又は双方を源泉とする資本関係であれば、譲渡取引ではなく、投融資とそれによる配当である。

資本家の有する既存の資本関係、それを土台とする紙幣発行権の取得についての実体関係から、利息の名目で契約上の義務よりも前の過程で現金が回収された事実関係においては、法人の資本家に課された現金留保義務により、資本家から利息の支払を転嫁されている労働者は、資本関係、生産関係から資本家に前貸しをすることを余儀なくされ、資本家には給料名目の現金で搾取の土台の再生産を余儀なくさせている生産関係上、疎外された労働分である利息の前払いすなわち前貸したことによる現金不足、労働疎外分を支払う義務がある。

現金の投下、生産手段の貸与、労働の疎外、資本への転嫁による現金留保、現金商品との交換までの過程については、生産手段を購入し、生産、現金商品と生産物の交換、労働を疎外済みで取引先へ提供した労働に転嫁された労働力商品と現金商品の交換を介在しているか否かの相違がある。

現金と投下量、紙幣の発行量は、既存の資本関係、所有関係、資本関係、所有関係を土台にした実体関係から、経済過程毎における投融資する側の全ての経済実体における現金留保から改定せざるを得ない。

課税が、労働者の現金留保を疎外して国際金融資本家への現金留保を集中する過程であることに鑑みれば、価値属性の付与による現金留保の否定であるから事実確定の問題であり、全法人の貸付の段階、経済過程上、債権者債務者の資本のストック、紙幣発行権の所有関係、実体関係の事実関係を確定する義務がある。

信用力やリスク、経済土台のない価値属性は、実体がないから、信用、リスク、経済土台のない価値属性を事実確定、問題提起の拠り所にすることは、国際金融資本家の資本関係、現金留保義務、現金回収義務から規定された法の趣旨のみと交渉し、経済関係事実の全体化をしないことであるから、事実確定、問題提起の土台とはならないであろう。

課税による労働の疎外、国際金融資本家への現金留保の集中という過程から、利率が理論に合致しているというだけでは課税は行うことはできないであろう。