[事実関係]

 同族法人である原告法人は、EB債と呼ばれる社債を発行し、その社債利息を損金計上して確定申告をしたが、税務署長はこれについて更正処分を行った。

 裁判所は、

「原告法人は、その所有する上場株式を将来売却する場合に多額の売却益が発生することに備えて、予め欠損金を発生させて蓄積しておき、その欠損金によって売却益を減少させる方法によりキャピタル・ゲイン課税を免れることを計画し、かつ、その欠損金を発生させるために実際に原告から支出する金員(支払利息)についてはこれをA若しくはA家族又はこれらの者が実質的に支配する会社等の外に流出することを防止するため、EB債の発行と購入者に対する利息の支払を考案したものである。

本件EB債のスキームにおいては、金員を出捐するA及びA家族とこれを受ける原告法人との間に新たに設立などする海外リミテッド・パートナーシップ、海外信託、海外法人等を介在させ、表面上はこれらの第三者が独立してEB債を購入するものとし(その購入資金合計1億1,500万ドル(約146億円)は、A及びA家族においてこれらの者の社債を購入し、あるいはこれらの者に出資するという形で出捐する)、そして原告法人はこれらの者にEB債の利息(年21.25%)を支払い、A及びA家族はこれらの者から社債の利息として金員の支払を受けるものであり、原告法人が支出した支払利息は実質的にはA及びA家族の支配下に置かれるというものである。

EB債に係る取引の実体は、上記のとおり、独立の第三者が原告法人の発行する他社株償還特約及び劣後特約付きのEB債を購入したものではなく、実質的には、A及びA家族が原告に対して融資(貸付け)を行ったものとみるべきである。

EB債がドル通貨で発行されていること及び償還期間が5年物スワップレートである6.005%及び6.095%をまず出発点として考えるのが相当である。

上記6.005%及び6.095%を基準として、更に、借主たる原告法人の信用力に応じたスプレッドと融資金(貸付金)の多寡や担保の有無等の個別的事情に基づく加算として1.9%を認めるのが相当であって、原告の上記主張も採用することができない。

上記のとおり、EB債の2月発行分については年利7.905%を超える支払利息部分、3月発行分については年利7.995%を超える支払利息部分は、いずれも損金の額に算入すべき販売費、一般管理費その他の費用には当たらず、それは、原告法人の役員であるA及びA家族に対する役員報酬とみるのが相当である。

原告はEB債の利息の支払について現実の資金の動きに合致した経理処理を行っている以上、当該経理処理は法人税法34条2項にいう仮装経理には該当しない旨主張する。

しかし、本件で事実の隠蔽、仮装の経理ととらえているのは、組織群をことさらに介在させて、介在させた組織群を利用して利息の収受を行っていたことであるから、たとえその利息の動きに合致する経理処理が行われていたとしても、それ自体があえて作出されていたものというべきであり、原告の上記主張も採用することができない」とした(東京高判平成18年6月29日)。

[解説]

紙幣発行権のない法人の資本家が、投融資を受けたことによる資本関係を土台とした現金留保義務から、所有する法人の架空資本に現金を投下し、現金を生産手段にして貸与し、労働を疎外して架空資本に転嫁して現金を留保する。

紙幣発行権のない法人の資本家が、その所有する法人に蓄積した現金留保の額を、紙幣発行権、証券取引所を所有する経済実体たる国際金融資本家が、既存の資本関係、所有関係を土台とした実体関係を土台とした現金留保義務、現金回収義務に基づいて、実体のない方便を使用して、架空資本に価値属性を付与し直して、資本関係、債権債務を確定させる。

架空資本は、所有することによって現金を産み出すのではない。架空資本が自然に増殖し、又は偶然に増殖し、増殖した資本から現金を贈与したという見解は、現実の経済過程、経済関係、経済実体から乖離している。

Aは、担保をとれなかったことにより、担保を生産手段にして、労働を疎外して担保に労働の疎外分を転嫁して現金留保したり、現金商品と交換し、現金に価値属性を付与することができないから、その分、利息の名目で、現金を回収せざるを得ない。

介在したパートナーシップ、信託が投融資したことが実体あるものとして社会に認めさせることに成功しているから、現実には、Aの資産を信託し、Aを受益者とし、原告法人は、パートナーシップ、海外信託の所有である。

労働の疎外による資本への転嫁の金額は、国際金融資本家が、既存の資本関係を土台とする実体関係に基づく現金留保義務に基づき、所有する金融機関を使用して契約を作成して規定し直され、租税名目、利子配当名目で現金留保は収奪される。

租税、利子、配当の支払は労働力商品に転嫁され、労働者は減額された賃金で搾取の土台の再生産を余儀なくされる。当該資本家及び当該資本家が所有する法人が、既に投融資を受けていて現金留保が不足していても、金融資本家から現金留保の不足に応じて投融資を受け得る資本関係が存することにより、貸倒れとはならない。

架空資本は現金商品と交換し、交換により取得した現金に価値属性を付与することで現金留保は実現する。

裁判所は、架空資本の含み益があることから、中途償還、中途買入償却できることから、金利を下げうるとするが、法人の資本家は、資本関係から課せられた現金留保拡大義務から、生産手段を貸与し労働を疎外することにより、疎外した労働を資本に転嫁し、現金留保しておいたり、さらに、既に労働を疎外して資本に転嫁済みの、法人が取得した資産を現金商品と交換せざるを得ず、現金を含む架空資本の所有があるだけで、貸倒れとならないとすることは実体がないのである。

使用人たる役員は、資本関係、生産関係から、生活の土台となる現金の留保義務に基づいて、資本家が投下した法人の現金を使用できず、役員の属性が付与された経済実体は、法人との資本関係に基づいて、生産手段を貸与し、労働を疎外し、法人に留保された現金商品を架空資本に投下した現金との交換により取得したのであるから、利息名目で支払った現金は、役員報酬ではなく配当ということになる。

欠損の発生・蓄積させるため、A及びAの家族が実質的に支配する会社等の外に流出することを防止するためという目的は実体のない観念である。証券会社が積極的に支払利息の利率を引き上げようと目論でいたということは実体のない観念である。

Aが原告の資産や経営状態を知っていたか否かは実体のない観念である。EB債を第三者に譲渡することは考えていなかったというのも実体のない観念である。経済実体は、意思を持たない。取引は経済関係、資本関係に応じてせざるを得ない。

観念に基づいて問題提起、事実確定することは、現実の経済関係、資本関係、経済関係、資本関係を土台とする実体関係に乖離する。

リスクや信用力といった属性は架空資本や現金には備わっていないから、実体のない属性に基づく利率は現実の資本関係、経済関係から乖離する。