[事実関係]
A法人は、海運業を業とし、外航船運行事業において、パナマ共和国に現地法人を合計8社設立して各々船舶を所有し運行させていた。
原告パナマ法人の損益の額の全てをいずれもA社の所得金額の計算上合算して法人税の確定申告を行っていた。
質問検査において、税務署長は、原告パナマ法人は租税特別措置法66条の6第1項が定める特定外国子会社に該当し、同条3項が定める適用除外の適用がないことから、同条の定める課税対象留保金額を益金の額に算入し、当初合算していた原告パナマ法人の所得を所得を減算するとともに、租税特別措置法66条の6に基づく更正処分をするとともに、過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
裁判所は、
「A法人は、租税特別措置法66条の6の適用によって法人税法11条の適用が排除されると解すべき法的根拠はない旨主張する。
しかしながら、租税特別措置法66条の6は、課税執行面における安定性を確保しつつ、外国法人を利用することによる租税回避等を防止して税負担の実質的公平を図るため、形式的かつ客観的に判断することができる「特定外国子会社等」という概念を設定し、外国法人がこの形式的かつ客観的な要件に該当する限り、実質的な所得の帰属主体に関する具体的な検討を経ることなく、その未処分所得の金額から計算される課税対象留保金額を内国法人の益金の額に算入することとした例外的かつ創設的な規定である。
このような租税特別措置法66条の6の制定経緯等に照らせば、上記のとおり、本件について租税特別措置法66条の6が適用される以上、原告が主張する法人税法11条が適用される余地はない。また、租税特別措置法66条の6は、特定外国子会社等に生じた欠損について、課税留保金額の前提となる未処分利益の計算を算出する際に5年間の繰越しを可能としており、これ以外の方法によって内国法人の所得の計算から直接に控除できない趣旨と解すべきである」とした(最判平成20年4月25日)。
[解説]
実体のない法の趣旨ではなく、法人の資本家は、資本関係、経済関係、現金留保義務から、その意思に関係なく法律行為を行うことにより実体あるものとして社会に認めさせることを余儀なくされるから、親法人、子法人は別の法人であり、子法人の欠損金を親法人の所得から控除できない。
現金は主人を持たないから、法人資本家の意思により、所有する各法人の現金留保を規定することはできない。
子法人の資本家は、子法人を使用して、現金を船舶に投下し、生産手段にして、労働力商品を購入し、労働を疎外して現金留保しているから法人の実体があるとされた。