<p>各々の寄附が会社法362条4項所定の取締役会決議を要する重要な財産の処分か否かについて、株式譲渡についてであるが、「当該財産の価額、その会社の資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮すべき」とする裁判例がある(最判平成6年1月20日)。
当該事例の場合、総資産に占める割合は1.6%とのことである。法人の実務においても、法人の資産の10,000分の1以上といった基準により取締役会に諮っていると言われる。
寄附行為をすることにより現実には使用人にその支払が転嫁されることになるだけに、資本家の経済関係のみを土台とすることなく、使用人の利益を疎外することなく、使用人も交え、土台となる事実関係を全体化する義務が法人の資本家にはある。
裁判においては、資産を譲渡、贈与せざるを得ないことの土台となった原因事実、譲渡、贈与の前後の譲渡先贈与先との資本関係、経済関係、実体関係の過程については問題提起の土台とはされず、実体のない目的や総資産に占める割合を現象と捉え、経験に基づいて考慮することとされてしまっており、全ての事実の摘出、事実関係を全体化せずに、事実を合算して吸収してしまい全体化を放棄しているのである。</p>