役員の退職慰労金規定より低額の退職慰労金を支給する旨の取締役会決議について会社の不法行為責任が認められた事例がある(東京地判平成10年2月10日)。
資本家は、法人名義で蓄積した現金留保に関係なく、生産関係上、労働を疎外することなく退職金を支払う義務がある。議事録に記された事項が自然不自然であるかではなく、生産関係上の義務に反しているか否かが問題となる。
給与、退職金の低額支給が否定されることは、法に反したことのみによる法人の資本家に意思のある責任ではなく、労働を疎外して、労働力商品と交換された現金に低い価値属性を付与して、生活に必要という方便により、労働力再生産、投融資先再生産といった搾取の土台再生産を余儀なくされているという損害の賠償義務、生産関係上の義務に基づくのである。