同族法人の代表者と取締役との間で退職金を支払う旨合意した場合に株主総会の決議がなくてもあったものと同視でき、決議の欠缺を理由に支払を拒絶することは信義則に反するとされた事例がある(東京高判平成7年5月25日)。
退職金を支払うことは生産関係上の義務に基づくのであって、法人資本家に意思はないから、意思を一致させることに基づくのではない。
退職金の支払いについての契約があったか否かは自然不自然という宗教や実体のない意思から規定されるのではなく、生産関係から規定される義務があるのであるが、現実には経済実体から規定されている。
退職金の支払うことを拒絶することは信義則に反するか否かという問題ではなく、生産関係上の義務に反するのである。