[事実関係]

 税務署長が、清算中の有限会社に対し、法人税の青色申告の承認の取消処分をしたところ、原告法人が、同処分は関係各法令及び信義則等に違反する違法なものであるとして、その取消しを求めた。原告法人は、「青色承認取消取扱通達は、2事業年度連続して清算予納申告書を提出しない事実を要件とし、当該2事業年度目の事業年度以降の事業年度について青色申告の承認を取り消すとしているから、同申告書の1事業年度のみの不提出による取消処分は法令を合理的に解釈する限りできない。しかし、本件通知書には、本件処分の基因となった事実として1事業年度の清算予納申告書の不提出しか記載されておらず、また、本件処分が2事業年度目以後の処分であることも明示されていない。とすれば本件処分は、上記通達を除外してされたことは明らかであるから違法である」と主張した。

 裁判所は、

「法127条1項4号は、青色申告の承認を受けた内国法人が清算予納申告書をその提出期限までに提出しなかった場合には、納税地の税務署長は、当該申告書に係る事業年度までさかのぼってその承認を取り消すことができると規定するのみで、青色申告の承認を取り消すことができるための要件として、2事業年度連続して当該申告書を期限内に提出しなかったことまでは明文をもって規定するものではないから、当該法人が1事業年度のみ当該申告書を期限内に提出しなかった場合でも、同号の文理からすれば、同号所定の要件に該当する。

また、当該申告書の期限内提出を怠った当該法人に対してはもはや納税上の種々の特典を与えておく理由は認められないという同号の趣旨からしても、当該申告書の期限内不提出が1事業年度のみであるか2事業年度連続してであるかによってこの点に有意の差はないというべきである。

そうであるとすれば、所轄税務署長は、当該法人の1事業年度の清算予納申告書の期限内不提出をもって、同号に基づき、同法人に対し、青色申告の承認の取消処分を行うことができるというべきである。そして、本件では、原告法人は、平成13年7月期及び平成14年7月期に清算予納申告書を提出しなかったというのであるから、本件処分は同号の要件を満たしていることは明らかである。

もっとも、青色承認取消取扱通達は、法127条1項4号の規定による取消しは、2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合に、当該2事業年度目の事業年度以降の事業年度について行う旨定めているところ、原告法人は、本件処分は、青色承認取消取扱通達に違反し違法である旨主張する。

しかし、青色承認取消取扱通達は、その形式及び内容等に照らしても、法令とは異なり、法規範としての性質を持つものではないことは明らかである。

のみならず、法127条1項4号の趣旨及び上記通達の内容等に照らすと、同通達の上記の定めは、法127条1項4号に基づいて青色申告の承認を取り消すことができるための要件についての解釈を規定したものではなく、同号所定の要件に該当する場合に、所轄税務署長が青色申告の承認を取り消すか否かの裁量権を付与されていることを前提に、当該裁量権行使の内部基準を定めたものと解されるところ、原告は、平成13年7月期及び平成14年7月期の2事業年度連続して期限内に清算予納申告書を提出しなかったというのであるから、本件処分は、税務署長が青色承認取消取扱通達の定める基準に従ってその裁量権を行使して行ったものということができる」とする(大阪地判平成17年6月17日)。

[解説]

 通達に性質は備わっていない。通達は、行政庁内部における上意下達の命令手段であると言われることがあるが、行政機関に意思はなく、金融資本家との資本関係から規定された生産関係上の義務である。行政は信義誠実に基づいて行われるのではない。通達によるよらないは平等原則という法則から規定されるというのは方便であって、金融資本家の資本関係と現金留保義務から規定される。司法は、金融資本家の資本関係、現金留保義務、現金回収過程から規定された法律制定上の方便たる立法趣旨と交渉して法解釈、法を包摂することを行っている。同号による青色承認取消は、期限内に申告をしなかったことにより、既成事実として現実に存在することを認めさせた欠損金を疎外することであるから、現象として捉えるのはでなく、申告書の期限後提出、不提出の過程における事実関係を調査し全体化する義務がある。