取締役会の決議により解任された代表取締役の退職慰労金の請求について、
一審は、「退任した取締役員に対する退職慰労金は、商法269条の報酬とみるべきであり、定款に定めのない以上、株主総会の決議をもって当該取締役に対する支給額を決定して(少なくとも、一定の金額算定基準の存在を前提として、退職慰労金を支給する旨を決定して)、初めて支給が可能となるものであり、右決議は退職慰労金請求権発生の要件となる。ところが、取締役を退任した原告に対し退職慰労金を支給する旨の被告株主総会決議そのものがないことは当事者間に争いがないのであるから、退職慰労金請求権は発生していないものというほかない」とするものがある」とし、控訴審も最高裁もそれを維持した事例がある()。
資本を有しない役員は使用人である。辞める辞めないに現実には自由意思がない。資本家と労働者の間に合意ということは有り得ないし、労働者が退職金を請求すること、資本家がそれに応ずることは現実には成立しない。実体のない不正、異常の属性を付与されて解職されることもある。法人の資本家に課せられた現金留保義務から解雇された場合にも、生産関係上、退職者から請求がなくとも、資本家は退職金を支払う義務がある。株主総会での決議事項とすることにより、既に疎外された労働が労働が疎外されて、退職金がゼロとされることも現実にある。資本を有する役員は、資本関係に基づいて法人の資本家の投融資した現金を使用するのであって、役員に経営権はなく、役員にに経営権があって当該法人の使用人との生産関係、取引先法人の労働者との生産関係に基づいて使用するのではない。資本関係に基づいて資本家が投融資した現金を使用して資本家の所有する留保現金にマイナスが実現したことから、損害賠償義務を課せられて退職金がゼロとなったのである。