退職取締役の退職慰労金は、商法269条の立法趣旨、すなわち取締役等が取締役の報酬額を株主の利益を害する不相当な高額に定め支給するのを防止することにあるとの趣旨から、退職取締役主張の如き実体を持つ所謂同族会社をそれだけの理由で右法条の効力枠外に置く合理的根拠はないとする裁判例がある(大阪高判53年8月31日)。

判決は、「退職取締役が従業員の地位を兼任していて、取締役の辞任と同時に従業員としての地位も失う場合には、別に従業員としての地位も失う場合には、別に従業員退職金の支給規程があって、その支給規定に基づいて支給されるべき従業員としての退職慰労金部分が明白であれば、少なくとも右部分に対しては、商法269条の適用がないと解するのが相当である。けだし、右退職慰労金部分は、労働関係の対償として支払われるものと解されるからである」とする。

同法人の退職給与規定には、会社の指示があるまで服務を継続しなかった場合、退職金が半額となる旨の規定が存在した。判決は、「会社代表者は、被控訴人に対し、同人の退職に伴う事務引継ぎを専務取締役となすべく指示したものであるところ、前記認定に係る、被控訴人の同会社における地位、職務内容、同会社代表者の被控訴人に対する慰留の意図内容等に照らし、同会社が被控訴人の本件退職に伴い右7条に則り指示すべき日は、右代表者の右指示により、右引継ぎ完了の日と指示されたと解するのが相当である」とする。

労働実体のない金融資本家が役員となっている場合、金融資本家の資本関係を土台とした現金留保義務に基づいて支払われる現実には配当である退職金とは異なり、資本を所有しない役員は、使用人であって、資本関係、生産関係から課せられた現金留保義務、労働力、投融資先再生産義務に基づいて、恣意的に報酬額を規定することはできない。資本を有する役員が役員退職金を規定するのは、恣意ではなく、労働を疎外して規定される、すなわち、資本関係に基づいて規定される。

資本関係により高額の役員報酬を同族法人の資本家たる役員が、中央銀行を所有する民間銀行に投融資を行うことができる既存の経済関係が存するから、株主総会の決議、金融資本家の決議が全ての法人における役員退職金支給の要件とされている。法は現金留保を有する国際金融資本家が規定する。立法趣旨に基づいて解釈することは、現実の生産関係を疎外して、資本関係に基づいて法解釈が行われるということである。

効力、効果は、経済実体を社会に認めさせる過程ではなく、実体のない期待を実体あるものと社会に認めさせることである。使用人退職金を株主総会の決議事項とすることは、資本関係によって、退職金支払過程においても、労働が疎外されて、労賃の名目で支払われた現金に低い価値属性が付与されて、生殖による労働力再生産の土台となる生活手段、労働という労働力商品に低く付与された価値属性が実体化されることである。

役員退職金の労働力商品名目で付与された価値属性と現実の労働を超える金額は配当ということになる。地位は生産関係、労働力に備わっていない、実体のない価値属性の付与であって、退職によって地位が失われるのではない。退職届出によって生産関係は終了すること、労働の疎外による資本家の現金留保という生産関係から労働を義務付けることができないという建前を基に、労働基準法の強制労働の禁止の規定により、資本家との生産関係による労働を義務付けられないことを認めさせる既存の過程から、退職届提出後、金融資本家の資本関係による属性付与たる日付の要件に応じてることを余儀なくさせられてきたのであれば、引継ぎの完了まで生産関係に基づいて職務に服すことを義務づけ、それに応じなければ現実の生産関係が終了した段階から遡って、既に提供した現実の労働を重ねて疎外し、退職金の金額を半額にする規程は、生産関係上、それを土台にした労働基準法上、問題があるであろう。

資本家が役員を使用して、退職届を出した労働者は、資本家との生産関係に基づいて労働力商品を提供を余儀なくされているから、現金留保に損害があれば、損害を賠償する義務を負うことは、生産関係上の義務である。生産関係と損害賠償義務からすれば、資本家は、労働者からの報告を待たなくとも、所有する法人の現金留保、その過程にある経済関係を把握している義務がある。労働者たる役員を慰留の意図は、実体のない方便であり、慰留は、現実には、引き続き労働に応じることを余儀なくさせることであり、資本家の資本関係、現金留保義務を基づいた、労働者の生活の土台となる現金留保を疎外するものであるから、退職金支給の規定の土台とはなりえない。