[事実関係]
繊維取引所仲買人を業とする原告法人は、商人仲買人の顧客についての委託手数料債権を現金回収に基づいて計上していたところ、税務署長は、上記委託手数料債権は、発生し、確定して時期の所属する事業年度の益金として課税すべきとして更正処分を行った。原告は、かかる処分について審査請求を行ったところ、国税局長は、請求を排斥して審査請求を行った。
裁判所は、
商品取引所法に基づいて定められた受託契約準則は、当事者に特別の約定のない限り、当該取引所の商品市場の売買取引の委託について、委託者を、その意思の如何にかかわらず、また、その知、不知を問わず拘束するものと解すべきところ(最高再昭和44年2月13日判決民集23巻2号337頁参照)、名古屋繊維取引所受託契約準則第20条第1項には、仲買人は委託手数料を委託者から決済のとき徴収する旨期待されている。
そうだとすれば、特別の約定のあったことを認めるべき証拠のない本件においては、商品仲買人である原告の委託者に対する手数料債権は売買決済のときに権利確定し、右決済日移行原告は受託者に対し右権利を行使することができるというべきであるから、右決済日の属する事業年度において法人税法条の益金として算入すべきものと解するを相当とする。
もし、原告主張のごとく委託者との間に売買差損金を現金決済したときに益金として計上すべきものとすべきものとすれば、右現金回収の時期を延期することによって恣意的に期間損益を左右することが可能となり、企業会計上の原則に反するのみならず、租税公平負担の原則に反する結果となる」とした(名古屋高判昭和44年11月28日)。
[解説]
売買決済の過程で既に労働は疎外されているから、手数料債権は成立し、それ以後仲買人は権利を行使しうる。金融資本家から課せられた現金留保義務から、現実には困難であるが、仲買人の.経済関係から現金回収を遅らせて請求を行うことができないということではない。
原則面からではなく、金融資本家との資本関係から、金融資本家との資本関係により規定された生産関係上の義務により、売買決済の完成に付与された属性たる日時に収益を計上することとされ、司法も応じざるを得なかったということである。
現金留保を持たない経済実体たる法人の資本家、労働者は、自由意思に基づいて経済を行うことや現金留保義務に基づいて行うことは現実にはできないから、委託人の意思や委託人が知っているか否かは実体がないから、経済関係上、契約準則は適用されると解されることになるであろう。