税務署長は、滞納者につき、次の各号に該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができる。一、滞納処分を執行することができる財産がないとき、二、滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき、三、その所在及び滞納処分を執行することができる財産が共に不明であるとき(国税徴収法153条1項)。
当該規定は、主語が税務署長であるから、滞納処分を執行できるという文言になっていても、滞納処分を停止しなければならないという義務を規定している。税務署長は機関であるから、処分を行う権限を現実には有していないから、当該規定は、金融資本家が、税務署長を使用して滞納処分を行うことを停止しなければならないと規定しているのである。
「滞納処分を執行することができる財産がないとき」とは、差押の対象となりうる全ての財産を差し押さえ、換価処分が終わったが、なお徴収すべき滞納処分費及び国税があるときをいう。この場合において、取立てが不能と認められる債権で差押えを解除したもの又は法第48条第2項(無益な差押の禁止)、第75条(一般の差押禁止財産。同条2項に該当する場合を除く。)若しくは第76条第2項(差押禁止に係る給与に相当する金銭の差押禁止。同条5項に該当する場合を除く。)の規定に該当する財産は、差押えの対象となる財産には含まれないとされる(国税徴収法精解906頁)。
生活を著しく窮迫させる場合とは、滞納処分を執行することにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければならない程度の状態になるおそれがあることをいう(基本通達153条関係三)と、生産関係上、規定されている。「おそれ」という書き方をしているから、金融資本家は、おそれという実体のない属性を付与して、おそれの有る無しに基づいて、「おそれがない」と主張してて滞納処分を義務づけることができてしまうのである。生活保護は投融資して労働を疎外することによる留保現金が蓄積できないから、滞納処分をしたことをもって、生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態にはなるおそれがないという属性を与えて、金融資本家が生活保護の支給を棄却することができると解釈する逃げ向上を同号は与えてしまっているのである。