[事実関係]

 木材等の製造加工販売を営む法人は、訴外法人より土地を時価に比して著しく低い価額で譲り受けた。

税務署長は、かかる土地の時価と譲受価額との差額については、贈与を受けたものと認められるから、土地の評価減をなしたものとなしたものとして、当該差額を益金に加算し、更正処分を行った。

 裁判所は、

「昭和40年法律34号法人税法22条2項によれば、益金算入額に算入すべき金額は、有償、無償の資産の譲渡及び無償の資産の譲受けについて、その収益とされているが、有償譲受については、益金に加算すべき場合を規定しておらず、また、同法37条6項は、資産の低廉譲渡について、その取得価額と時価との差額を寄附金として取扱う場合のあることを規定するが、これに対応する資産の低廉譲受について何らの特別規定が存しない。

加えて本件は、前記附則2条により、右改正前の法人税法を適用すべきであるところ、益金に算入すべき金額、資産の低廉譲渡に関する取扱は、改正前においても前記法人税法22条2項、37条6項に規定されているごとくあるべきと解することができるのであるが、いうまでもなく、租税を課しうるには、納税義務者、課税物件、課税標準、税率等の実体関係のみならず、納期の時期、納税法法等の徴収手続についても実定法で定められていなければならないのであって、法の予想を超えて実質的に新たな課税物件を創設ないし拡張することは許されないことであるから、本件のごとく、資産を低廉価額で譲り受けた場合の譲受価額と時価との差額については課税しえないのではないかとの疑いが生じえないでもない。

しかしながら、低廉譲受という一個の外観的法律行為の中に、その法律行為から生ずることのない別の法的経済的効果を意欲し、これが発生している場合には、私法上もいわゆる隠匿行為としてその効力を有しており、その収益に対し課税することは妨げないものというべきであるから、私法上許された一個の外観的法律行為の形式の全部ないし一部が真の法的経済的意図と合致していないときは、その部分につき本来の内部的意思に適合する法形式に引直してその結果に対して課税しうるものといわなければならない」とする(山口地判昭和45年1月19日)。

[解説]

 固定資産を譲り受けた法人の資本家は、現金商品を引き渡して当該固定資本を得て、引き渡した現金商品に価値属性が付与され、譲渡した法人の資本家が、所有しているだけでは現金を産み出さない、価値属性の備わっていない、すなわち実体のない権利、固定資本に、仕入先の労働者の労働を疎外して付与した価値属性により現金を投下し、自らの使用人の労働を資本関係、現金留保義務を基に疎外してそれを固定資本に転嫁して付与した価値属性を実体あるものと社会に認めさせることになる。

固定資本につき、低廉譲渡があった場合、無償で譲り受けた部分については、固定資本の価値の発生があって、それにより譲渡人が現金を留保し、現金の贈与を受けたのではない。有償で譲渡を受けた部分に純資産の増加があって、無償部分からも純資産の増加があるとすることは、現実の経済実体から乖離している。

譲渡契約の土台となった債権、本件の場合、営業権価額は、金融資本家と全資本家との資本関係、現金留保義務から、現金を投下した土地を所有する法人の労働者、営業権譲渡法人の資本家が所有する使用人、譲受法人の資本家が所有する労働者の労働を疎外して、営業権と土地に価値属性が付与され、固定資本を引き渡すことで現実には実体がない営業権の時価が実体あるものとされ、代物弁済を受けたということになり、有償譲渡である。

譲渡契約が、譲渡法人と譲受法人間に資本関係にのみ基づいていれば、譲渡法人の資本家は譲渡の名目で配当を得たことになる。

法律行為をして社会に実体あると認めさせるこ過程は、経済関係、資本関係、生産関係に基づいて行わざるを得ないものであって、自由意思でそれを行う行わないを選択できるものではない。

内部的意思、効果、意欲、意図は実体のない、金融資本家の方便であって、現実の経済取引による、労働の疎外による現金留保の土台につき、法人間で契約することにより社会に実体があると認めさせた経済関係を疎外して、金融資本家の資本関係、現金留保義務、現金留保過程により、交換された資産の双方に価値属性を付与して実体化させて、全資本家との資本関係、税務行政機関との生産関係による課税によって現金留保を蓄積していったのである。

所得や課税に適正という属性は備わっていないから、適正課税に基づいて課税処分が行われたのではない。