[事実関係]
共働きで幼児1人がいる夫婦である原告は、原告の内、一方が昭和46年1月から9月20日まで法人、同年9月21日から同年末まで労働組合に勤務し、他の一方は、同年1月から12月まで当該法人に勤務し、給与所得を得ていた。
原告は共に、昭和46年分の所得税をについては、源泉徴収により国庫に収納されていた。
原告は、
「源泉徴収制度は、給与所得者から確定申告や不服申立権を奪うなど、他の所得税の納税義務者と比較し、給与所得者を不利益且つ不公平に取り扱うもので憲法14条1項等に反する」
「給与所得者には、その生計費を必要経費として控除することを認めない制度は、必要経費の実額控除を認める事業所得等に比べて給与所得者を不平等に取り扱うもので、憲法14条1項等に反する」
「憲法25条は生活費非課税の原則を要請しているところ、この最低生活費は、人的控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除の合計額)によって充足されなければならないが、昭和46年分所得税課税は一件明白に原告らの最低生活費にも課税する結果になっており、所得税の徴収の根拠となっている諸規定は、憲法25条に違反しており、違憲無効(法令違憲)である」
「所得税を徴収の根拠となっている諸規定合憲であるとしても、原告らに対する課税は、一見明白に最低生活費に食い込んでおり、所得税の諸規定を原告らに適用して所得税を徴収したことは違憲無効(適用違憲)である」と主張した。
裁判所は、
「給与所得者に対して生計費を必要経費として給与控除を認めないことは事業所得者を不当に差別するものであると主張するが、所得税法が必要経費の控除について事業所得者等と給与所得者等との間に設けた区別は合理的なものであり、憲法14条1項に違反するものでないことは、60年3月27日大法廷判決に照らして明らかである。
憲法25条の規定の立法趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるのかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱、濫用と見えざるを得ないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事項であるとしなければならない(最高裁57年7月7日第法定判決)。
原告らは昭和46年の課税最低限がいわゆる総評理論生計費を下回ることを主張するにすぎないが、右総評理論は、日本労働組合総評議会にとって望ましい生活水準ないしは将来の達成目標に他ならず、これをもって、健康で文化的な最低限度を維持するための生計費を基準とすることはできず、他に原告らは、前記諸規定が立法府の裁量の逸脱、濫用と見えざるを得ないゆえんを何ら具体的に主張していないから、憲法25条、81条違反の主張も失当である。
源泉徴収制度が憲法14条1項に違反するものでないことは、昭和37年2月28日大法定判決の趣旨に徴して明らかであり、それゆえ、源泉徴収制度の憲法31条、84条違反を言う原告らの主張は失当である」とした(最判平成元年2月27日)。
[解説]
社会保険は、実体のないリスクにより、生命保険と同じく、保険というのは名目で、支払を余儀なくされ、支給事由に該当しないとされて払込金銭は投融資に回され、戦争を行わせ、戦争に投融資される。
金融資本家との資本関係、資本関係により課せられた現金留保義務から、実体のない信用が付与された架空資本や保険や投資信託に投下させられ、生産手段と労働力製品の購入、再生産、投融資先の再生産を余儀なくされ、担保資産名目で労働を疎外することにより現金留保をしてきた固定資本を取り上げられ、金融資本家によって売却され、売却先に投融資が行われる。社会保険は、架空資本、生命保険への現金投下、現金を投下した資産を担保名目で提供する、債務者の現金留保からは返済できない借入金への現金投下を受けさせること、租税と同じく、投資から配当へという、金融資本家への現金留保過程にあるものである。
社会保険は租税でもある。社会保険控除に相当する金額は生活費に投下することはできない。社会保険控除は、課税最低限を構成しない。給与所得控除は、金融資本家の現金留保義務、過程に基づいた、労働の実体とは関係のないものである。
労働者は、労働力商品を売り、経済過程、生活過程、生存過程に付与された属性たる時間の内、生活、生存時間を削って、時間を資本家に売ることによって生存の土台としている。生殖による労働力商品の再生産、投融資先の再生産という名目で価値属性を付与され、無償労働時間という属性が拡大され、現実にした労働の実体に基づかない、すなわち労働を疎外された現金留保により生殖による労働力商品、投融資先の再生産が義務付けられている。
課税最低限は、生産関係上、資本家、労働者の実体のない現金留保の期待、目標に基づくのではない、現実に要した、労働、生活の土台となった生活費から規定される。
現金留保を蓄積した金融資本家が、資本関係、資本家、投融資先双方に課せられた現金留保義務、生産関係を土台に立法をするから、立法趣旨は、現金留保を疎外される側、疎外する側の経済実体をはじめ全く実体がなく、立法府、司法に裁量、選択権は存在せず、資本関係、現金留保義務、生産関係によって立法、審査せざるを得ず、立法趣旨、判決趣旨と交渉して解釈、法を包摂することや、立法府に裁量、選択権があるとすることは、法を金融資本家の資本関係、現金留保義務、過程の土台とすることを社会に認めさせることであり、納税者が現実の経済実体に基づいて主張する義務を封じるものである。
労働力、投融資先再生産義務から生活保護を受けている者の、生活保護受給費は、課税最低限から控除されないし、独身者であっても課税最低限は減額されない。
資本、生産手段を所有しない役員、使用人は、労働実体がなく、現実には国際金融資本家である名目上の役員、国際金融資本家の使用人として工作を余儀なくされ、資本関係を土台に、所有法人からの配当を役員報酬名目で受け取る、所有法人での労働実体のない劣後金融資本家とは経済関係が異なる。
劣後金融資本家は、法人を所有し法律行為により実体化することにより、労働を疎外し、労働力商品という価値属性を与え、価値属性を低下させた分を原材料に転嫁し、現金留保を蓄積し、租税、支払利子、支払配当を労働者に転嫁し、給与が支給される。
資本家は、実体のない減価償却の損金算入、社宅、車両の賃借料、減価償却、使用人の使用実績のないレジャー施設を福利厚生費を損金算入し、現金留保を蓄積できるが、資本を持たない労働者は現実においてはそれができない。
給与所得控除は課税最低限を構成しない。労働者にとっては、住宅家賃、車両関連費、福利厚生費、労働疎外による繰越欠損金、支払を余儀なくされている借入金利子をはじめとする現金の投下である生活費も生存、生活の土台である労働の源泉であり、支払いを与儀なくされるものである。
金融資本家による組織再編を媒介にした現金留保という課税関係、課税過程から、調査して事実確定をして理由を附記して処分を行う義務があり、理由附記をしていない課税処分は実体がないことは、全ての所得について言えることである。
不服申立てができることを告知しなければならないことは、他の所得と同じである。労働疎外により現金留保が資本家より少ないことから、住宅や車両の減価償却費の計上を認めることは生産関係上の義務である。