[事実関係]
原告法人は、昭和40年12月頃、従業員給与規程を改正し、同じ条件で勤務を継続する従業員にも、勤務年数を5年間で打ち切り計算して就職後5年毎に退職金名義で手当を支給することとした。
原告法人は、昭和41年から44年5月までの間に勤続期間が5年に達した従業員に、この規程に基づきその都度支給した金員について、これらを退職所得として取り扱い、源泉徴収税額が存在しないとして、源泉徴収をしなかった。税務署長は、右金員が賞与に該当するとして、右金員に係る各源泉所得税の納税告知処分及び各不納付加算税賦課決定を行った。</p>
裁判所は、
「所得税法において、退職所得とは、「退職手当、一時恩給その他退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいうものとされている(30条1項)。
そして、法は、右の退職所得につき、その金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とする(同条2項)と共に、右退職所得控除額は、勤続年数に応じて増加することとして(同条3項)、課税対象額が一般の給与所得と比較して少なくなるようにしており、また、税額の計算についても、他の諸tくと分離して累進税率を適用することとして(22条1項、201条)、税負担の軽減を図っている。
このように、退職所得について、所得税の課税上、他の給与所得と異なる優遇措置が講ぜられているのは、一般に、退職手当等の名義で退職を原因として一時に支給される金員は、その内容において、退職者が長期間特定の事業所等において勤務してきたことに対する報償及び右期間中の就労に対する対価の一部分の累積たる性質を持つと共に、
その機能において、受給者の退職後の生活を保障し、多くの場合、いわゆる老後の生活の糧となるものであって、他の一般の給与所得と同様に一率に累進税率による課税の対象とし、一時に高額の所得税を課することとしたのでは、公正に欠き、且つ、社会政策的にも妥当でない結果を生ずることになることから、かかる結果を避ける趣旨に出たものと解される。
従業員が退職に際して支給を受ける金員には、普通、退職手当又は退職所得に当たるかどうかについては、その名称にかかわりなく、退職所得の意義についての立法趣旨に照らし、これを決するのが相当である。
かかる観点から、考察すると、ある金員が右規定にいう「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるというためには、
(1)退職すなわち勤務関係の終了という事実によってはじめて給付されること、
(2)従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払いの性質を有すること、
(3)一時金として支払われること、の要件を備えることが必要であり、
また、右規定にいう「これらの性質を有する給与」に当たるというためには、それが形式的には、右の各要件を備えていなくても、実質的にみてこれらの要件の要求することに適合し、課税上、右「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものであることを必要とすると解すべきである。
これを本件についてみると、原審の確定したところによると、
(1)上告人の従業員給与規程15条は、「退職金は、左の場合に支給する」と規定し、「4. 勤務年数が会社設立後、又は、本人の就職後満5か年 爾後満5か年を加算した時期が到来した場合」との事由を掲げており、
(2)右の規定が設けられたのは、昭和40年頃、中小企業が営業を停止し、退職金を支払わずに従業員を解雇する事例が相次いで起こったところから、同年12月頃、上告人の従業員労働組合から上告人に対し、3年の期間毎に退職金を支払って欲しい旨の申し入れをし、設立後5年未満であった上告人が、遡及支払手続を要しない5年間で勤務期間を区切り、就職後5年毎に退職金名義で手当を支給するために、給与規程を改正したものであり、これによる営業の停止による解雇の場合の退職手当を実質上、前払いの形で保障し、併せて、営業停止の際の退職金支払に要する経済上の負担を軽減することとしたものである。
(3)右改正された給与規程には、退職金の財源確保として、中小企業退職金共済制度による掛金をすることとするほか、退職金の算定について定めた規定(16条)が存し、また、「第15条第4項により退職金を支給した場合は、従来の在職期間は、打切り、既往の在職年数は、在職年数には加算しないものとする。第15条4項の場合は、第16条に規定する中小企業退職金は支給せず、爾後に継続する。」との規定(第17条)が存する、
(4)しかし、5年の勤続機関を経過して本件退職金名義の金員の支給を受けた者は、その機会に自らの意思で退職する者を除いては、改めて再入社のために一般の入社の場合における所要の手続等を経ることなく、従来のままの就労を継続している、
(5)また、右の者の賃金その他の労働条件も、従来のそれと全く変わることがなく、年次有給休暇については、新たに入社した者に対しては、その入社年度には、これを与えないものとしているのに、5年の勤務期間を経過して退職金名義の金員を受けた者に対しては、右期間経過後の初年度には、未使用右有給休暇日数の次年度繰越しが打ち切られるのみで、6日分の有給休暇分の休暇が与えられることとされている、
(6)中小企業退職金共済制度については、新たに入社した者の掛金は、退職後満1年を経過してからこれを払い込むこととしているのに、5年の勤務期間を経過して退職金名義の金員の支給を受けた者については、右期間経過後の初年度から掛金を払い込んでおり、また、右勤務期間を経過した者でも、右制度による退職金の受給申請をしたものははなく、この関係では従前の期間を通算するものとして取り扱われている。
(7)従業員として身分を失う事項を定めた就業規則には、給与規程により、5年毎に退職金名義の金員を受領した者がその際に従業員としての身分を失う旨の定めはなく、また同18条では、「従業員の停年は満55歳とする」旨を定めて定年までの身分を保障しているというのである。
原審の事実認定によると、原告法人がその従業員に対し5年間の勤務期間を経過する毎に支給する退職金名義の金員は、少なくとも、既往の右の期間における勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払という趣旨以外に特段の趣旨を有するものではないということができるが、他方において、右金員の支給を受けた従業員は、一旦退職したうえ再雇用されるものではなく、従前の雇用契約がそのまま継続しているものとみるべきであり、また、右金員支給の基礎となる5年の期間は、その経過によって勤務関係を終了させる意図から設けられたものではなく、むしろ将来勤務関係が確定的に終了する際に支給される退職金を実質的に前払するための計算の便宜上定められたものにすぎず、五年という年数にそれ以上に特段合理的な根拠があるえあけではないとみるべきであって、これらの点を考慮すると、右金員は、前記の要件である、勤務関係の終了という事実によってはじめて給付されること、という要件は明らかであって退職所得にはあたらない。
尤も、このように解した場合には、上告人の従業員は、確定的に退職し雇用関係から最終的に離脱する際に支給される退職金を除いては、勤務満5年毎に支給される退職金名義の金員につき、課税上優遇措置を受けられないことになるが、上告人及びその従業員が前記のような給与方式を選択した以上、このような結果になるのはやむを得ないことと言うべきである。
また、退職金の支払の確保及び右支払時における経理上の負担の軽減を図るためであれば、他の方法がないわけではないから、単に実際上の必要があるということから、本件退職金名義の金員の性質につき、前記と異なる解釈をとるのは、相当でないといわなければならない。
以上のとおりであるから、本件退職金名義の金員にかかる所得は、法30条1項所定の退職所得には当たらないというべきである」とする(最判昭和58年9月9日)。
[解説]
劣後金融資本を役員にして、現実には使用人である当該劣後金融資本は、国際金融資本から役員報酬名目の投融資を受け、国際金融資本が最も利潤をコントロールし、商品と商品を交換しそれに価値を付して現金留保することとなるのであるが、利子配当により労働を疎外して搾取利得たる現金留保のおこぼれを得ており、労働の疎外による使用人報酬のみが経済の土台ではない。
所得税、法人税は国際金融資本への利子配当である。労働者は、劣後金融資本が受け取る特定役員の役員報酬とは、経済関係、生産関係が異なる。
支給された金銭には属性は備わっていない。現実には配当である国際金融資本の架空資本、固定資本の譲渡に 2分の1控除、国際金融資本が労働者との資本関係をフィクションする法人の架空資本の譲渡益に課税を免れさせることが認められているにもかかわらず、労働者が法人の資本に5年間前貸しをさせられてきた労働の疎外により搾取された金額には退職所得とはせずに、賞与という価値属性を付与して課税を行ったのである。
資本との生産関係、給与以外に経済の土台がないことに鑑みれば、労働力は国際金融資本に貸し出しをしているのであるから、金融資本、法人の存続よりも労働債務を支払うことが優先される。
早期退職制度や退職勧奨は、現実には、経営者たる資本、労働者による自由意思ではなく、労働の疎外を土台とした、金融機関の労働者との間にフィクションした資本関係、国際金融資本の、法人資本を使用したことによりフィクションされた資本関係、現金留保によって、解雇されたものである。生産関係を停止し、労働力という階級(身分)という属性が付与されることが停止されたと解される。
当該法人におけると否とを問わず、国際金融資本を使用した架空商品の奴隷となったことによる、労働力の再生産について、労働力が意思に基づいて選択したかのようにされてしまったのである。
国際金融資本は、劣後資本たる代表労働者に貸付をフィクション又は錯覚させて、解雇を手段に、未使用有給分の評価を疎外して労働力の再生産をさせてきたのである。
国際金融資本は、労働力を延命し生存させ製薬の労働力との資本関係を強化し、労働の疎外、労働力の再生産 資本関係のフィクション 労働力の再生産をさせている。
国際金融資本は、司法、行政を使用して行為の目的、法の趣旨と交渉させるのではなく、労働の疎外、預金、中退共を手段とした国際金融資本への前貸し、返済を待たされ労働力の再生産を余儀なくされ国債の返済の負担をされてきたという事実関係を土台に、支払いをして利子、有給休暇を含めて労働の評価をしなければならない。
中退共の評価とは別に、労働過程を架空の商品と交渉してそれに価値を付さなければならない。
生産関係上、労働疎外により未払となっていた給与は支払う義務が存するのである。5年で雇用契約が切れることが契約により、生産関係上、社会上、認めさせることに成功させられてしまっているにもかかわらず、判決は、勤務関係の確定的に終了する意図という実体のないものに基づいて、実体のない将来の計算上の便宜としてしまっている。
疎外された労働の評価の一部分を返済したことに、実体のない、備わっていない前払の属性を付与してしまっている。実体のない、前払するためという方便たる目的を判決は与えてしまっている。
退職金の支払確保、経理の負担軽減を図るという実体のない観念たる意図と司法は交渉し、退職金名義の金員又はそれ以外の属性が、紙切れには予め備わっているかのように、退職金には予め性質が備わっているかのように判示してしまっている。
それが退職金か賞与かは、現実の生産関係、それを土台とした法律関係から規定される。 </p>