所得税基本通達27-2は、「いわゆる有料駐車場、有料自転車置場等の所得については、自己の責任において他人の物を保管する場合の所得は、事業所得又は雑所得に該当し、そうでない場合の所得は、不動産所得に該当する」とする。

所得税法基本通達26-4は、アパート、下宿等の所得の区分については、次によるとする。

(1)アパート、貸間等のように食事を供さない場合の所得は、不動産所得とする。

(2)下宿等のように食事を供する場合の所得は、事業所得又は雑所得とする。

これをデフォルメした所得税法27条第1項は、「事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当する者を除く。)をいう」とする。

所得税法26条は、「不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産所得等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」とする。

不動産所得につき、不動産所得が事業所得、雑所得とは、区別されているのは、不動産などの貸付けが定型的に資産性が高いと考えられ、これに対応した措置を講ずる必要があると考えられたからであるとする論者がいる(スタンダード所得税法補正版192頁)。

同論者は、このようなことを述べた上で、管理人を雇って駐車場を管理した場合や他人を居住させて朝晩の食事を提供した場合を例に挙げて、人的役務の提供を行っているものは不動産所得ではないとする。事業所得か雑所得のどちらかであるとする。

別の論者は、不動産所得が資産性所得であり、事業所得が資産勤労所得であることからして、不動産の貸付けが事業としている行われている場合であっても、人的役務が伴わない場合や人的役務が付随的なものにすぎない場合(例えば、貸間業・船舶貸付業)は、そこから生ずる所得は、事業所得ではなく不動産所得であると解すべきであろうとする(金子宏第17版平成24年205頁)。

人を雇って労働をさせる場合には、何故、不動産所得ではないのかについて、前述の論者の説明や所得税基本通達27-2を見ただけではわからないだろう。

資産性云々についても、納税者は、何のことだかさっぱりわからないであろう。

行政機関を雇用する金融資本は、不動産賃貸借の場合、賃借法人が中間搾取を行っていると認定する。固定資産は、利潤を産まない。

いかなる場合でも、資産を稼動させている労働力すなわち人間の肉体が、労働力を含む商品や既存の資産の加工、変形、修繕を行うのであるから、収入を生み出すのも、利潤の評価を生み出すのも労働力の労働によってである。

現実には、賃借人の労働力の労働は、賃借法人資本を通じ、賃貸人と賃借人たる法人資本の双方から、労働を疎外される。不動産、船舶、航空機の貸付けから生じる所得については、産業法人よりも高い担税力という価値属性を付与して不動産所得と規定しているのである。

労働をしていないのに、労働力よりも所得を得て、労働力商品を購入して借入れというフィクションを受け入れている労働者すなわち事業所得者の税引前の利潤から商品の分配を受けているから不動産所得として課税をされているのである。

因みに、全ての労働力、不動産所有者をコントロールしていることをも含め、最も利潤の分配を受けているのは、不動産を貸し付けている者に金を貸したことにしている国際金融資本である。

賃貸人が労働力商品を購入し、生産手段を貸与して労働を疎外し、生産関係が存在し、賃貸人が使用する労働者が賃借法人の資本家に労役を提供していれば、賃貸人が得ている収入は事業所得又は雑所得ということになる。