[事実関係]

輸出者は、金融資本家との資本関係から売らざるを得ず、売る義務、前提で商品を購入し、運送事業者から船荷証券の発行を受け、為替手形を振り出し、これを船荷証券その他書類に添付し荷為替にして、金融機関に買い取られ、売上代金を回収し、仕入れ諸掛を支払う。ビデオデッキ、カラーテレビ等の輸出取引を行う法人の行う取引は、当該法人が輸出商品を船積みし、運送人から船荷証券の発行を受けた上、為替代金を振り出して、これを船荷証券その他の船積書類を添付し、当該法人の取引銀行で買い取るというものであった。

法人は、荷為替手形を買い取られた時点で、輸出取引による収益を計上してきたが、税務署長は、当該会計処理は、法人税法22条4項所定の一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合しないとして、商品の船積時点を基準日として収益を計上した上、当該法人の法人税更正処分を行った。

判決は、

「権利の確定時期に関する会計処理、法律上どの時点で権利の行使が可能であるかという基準を唯一の基準として見なければならないとするのは相当ではなく、取引の経済実態から見て合理的なものと見られる収益計上の基準の中から、当該法人が選択し、継続してその基準によって収益計上している場合には、法人税法上も右会計処理を正当なものとして是認すべきである」としながら、「その権利の実現が未確定であるにもかかわらずこれを収益計上したり、既に確定した収入すべき権利を現金の回収を待って収益に計上をするなどの会計処理は、一般に公正妥当を認められる会計処理の基準に適合するものとは認め難いというべきである」とし、

「これを本件のような棚卸資産の販売位による収益についてみると、前記の事実関係によれば、船荷証券が発行されている本件の場合には、船荷証券が買主に提供されることによって、商品の完全な引渡しが完了し、代金請求権の行使が法律上可能となるかという基準によってみるならば、買主に船荷証券を提供した時点において、商品の引渡しにより収益すべき権利が確定したものとして、その収益を計上するという会計処理が相当なものということになる。

しかし、今日の輸出取引においては、既に商品の船積時点で、売買契約に基づく売主の引渡義務の履行は、実質的に完了したものとみられるとともに、前記のとおり、売主は、商品の船積みを完了すれば、その時点以降はいつでも、取引銀行に為替手形を買い取ってもらうことにより、売買代金相当額の回収を図り得るという実情にあるから、右船積時点において、売買契約による代金請求権が確定したものとみることができる」とする(最判平成5年11月25日)。

[解説]

商品の船積時点を基準として金融機関が買主から荷為替の代金の支払を受けて、貨物引換証となる荷為替を買主に譲渡する。

売主は、投融資を受けている金融資本家との資本関係から、売上代金たる現金を回収が確定、現実にできていなくとも、労働の疎外による搾取の源泉たる現金を投入して現金留保を続けざるを得ない。

売主は、売上代金を、金融資本家によって、買主に前貸しさせられている。産業資本家は、代金の回収する時点という属性に、自由意思もなければ、自らの現金留保過程を土台とすることもできない。荷積みの段階で付与した価値属性は契約を通じて実体あるものにしている。収益の実現は、労働の疎外により利潤が確定し、荷積、船積までの段階となる。

売上計上時期は、時間という属性が付与されて荷積日、船積日になる。消費税創設後の輸出産業の場合には、輸出売上はゼロ税率で、消費税還付が受けられるが、国内のみ販売の卸売、小売業者は、売上が確定され、全資本家を所有する金融資本家に労働が疎外が確定されているにもかかわらず、納税の支払手段たる現金がなく、回収できないという実体のないリスクの問題でなく、現実に現金を回収できておらず、留保することが確定した現金に付与された属性が実体化した、すなわち、収益が実現されたとして計上させられた時点では、税負担するだけの現金留保がないのに、納税は猶予されない。

国際金融資本家との資本関係、国際金融資本家の現金留保義務から、荷為替や船荷証券を交付した段階で、信用や保険といった実体のない金融資本家の方便により、引渡義務のある商品の所有権を売主は失うとされ、売上計上を余儀なくさせられている。

一時たりとも現金を産業資本家に所有させず、産業資本家は、労働者が労賃を受け取る前に労働者に労働の疎外による搾取を現実に履行し、租税負担を労働者に転嫁する。金融資本家によって、公正妥当の属性を与えられた会計基準により計上された利益や当該法人採用した会計基準が、公正であるか否かではなく、理論に適っているか否かではなく、経済関係、それを土台として法律行為を媒介に経済関係を実体あるものにして社会に認めさせることの確定を土台としているか、所得の土台となりうるか、当該事業の現金留保の過程を土台としたものなのかである。

現金留保の過程を基礎としない売上計上による収益は、所得が、所得の土台となる利得が実現したものとできるかを見直す土台となるかである。

司法は、金融資本家との生産関係から、産業資本家に現金を留保させずに、産業資本家が投融資を行ったり、中央銀行創設による投融資の額と全ての各資本家の現金の額を規定することをできなくさせてきた既存の過程を土台に、金融資本家が規定した売上計上基準に公正の属性を与え、資本経済の促進の土台たる装置となってきたのである。

税務署長、司法を生産関係上、雇用してきた金融資本家は、産業資本家、劣後金融資本家の現金留保過程に基づいた会計基準の選択を行い得なくしてきたのである。金融資本家の現金留保過程に基づいた選択を行わせ、自由意思による選択の属性を与え、選択させられた者の自己責任としてきたのである。