[事実関係]

合併法人Xと被合併法人は、同族関係者が発行済株式の過半数を直接又は間接に所有し、設立以来業績不振により累積赤字が増加し、事業廃止届けを陸運局に提出し、従業員を合併前までに全員解雇し、設備、無形資産が存在しない自動車整備加工販売を業とするX社が、連年利益を計上し、従業員200名を超える電子電気部品製造を業とする旧X会社を、合併比率1:1とする合併を行った。

税務署長は、法57条を適用するならば、実質上当該規定を設けた趣旨にもとると見られる結果を生じる場合には、当然法人税法132条を適用して否認できるものとして更正処分を行った。

国際金融資本は、日本の全資本家との既存の資本関係、現金留保過程という既存の経済関係を土台に、平成13年税制改正後、適格合併の場合には、青色欠損金の被合併法人から合併法人への引き継ぎが認められる(法人税法57条2項)とすることを社会に認めさせることに成功したが、取引当時は、法人税法57条の繰越欠損金損金算入は、その法人において生じた青色欠損金にのみ適用され、法人が合併されたからといって、被合併法人に引き継ぎ控除することはできないと、金融資本家と税務署職員の生産関係上されていた。

判決は、本件合併は、赤字法人が合併法人、黒字法人を被合併法人となり、合併法人たる赤字法人の繰越欠損金を損金に算入したものであって、本件合併は、その法形式にもかかわらず、経済実質において黒字法人が赤字法人を吸収したものと評価されるものであって、合併の実体としては、法律上の合併法人である赤字法人の事業ないし経営実体が消滅し、被合併法人である黒字法人の企業としての実体のみ存続継続しているのであって、企業の実体は、合併の前後を通じて変わっていないものとする。判決は、続けて、そうだとすると、存続法人である赤字法人が合併の前後を通じて実質上同一性を保持しているとはいえず、企業として実体を失った赤字法人の事業経営上生じた繰越欠損金を、合併後経営実体の存続する被合併法人である黒字法人の事業活動上生じた所得から控除することは、実質上、旧X社がX社の事業経営上生じた繰越欠損金を旧X社の損金として算入することにほかならないから、法57条の趣旨・目的に照らし、同条の容認し得ないところであると解するのが相当であるとする(広島地判平成2年1月25日)。

[解説]

逆さ合併は、国際金融資本家が、日本の全資本家との既存の資本関係、経済関係を土台に、その資本関係のある金融機関を使用して、経済関係上の過程が停滞した法人に、その架空資本に実体のない価値属性を込め、経済関係上の過程が継続しているとして、法律行為により、経済実体のみならず法律上も実体があるものとすることを社会に認めさせてきてしまったものである。

逆さ合併に土台となる経済関係があったか否かを全ての問題提起することなく、判決は、逆さ合併が不自然で青色欠損金の控除のみを目的とした租税回避行為に該当するとして、同族会社の行為計算の否認規定を適用しており、宗教学や目的という実体のない唯心論に基づいて判決をしてしまっている。
当該事例の経済関係を見れば、赤字法人の架空資本に実体のない高い価値属性を込めることにより、黒字法人が赤字法人の関係法人に資産を現実には低廉譲渡して法人であることを消滅させたのであって、赤字ではあるが、資本家には現金留保があって、清算させていない法人に利益を移転したのであるから、赤字法人に対する資産の譲渡は、法人税法上の寄附金であり、その資本家に搾取の源泉、配当原資となる現金を贈与したということになる。