[事実関係]

 A社は、原告について有する5億円の貸付債権をC社へ譲渡し、C社は、当該貸付債権をドイツ銀行に譲渡し、同銀行はB社に当該貸付債権元本残高4億3,000万円を1億6,200万円で譲渡した。

原告とB社は、当該貸付債権の内、4億3,000万円の債権を現物出資することにより、原告が発行した普通株式80万株を引き受けることを契約により確定させた。

原告は、債務を株式に転化させたことについて、長期借入金勘定を4億3,000万円減少させると共に資本金勘定を4億円、資本準備金勘定を3,000万円増加させる経理を行った。

これにより、税務署長名義で、デッドエクイティスワップにつき混同による債務免除益の計上漏れがあるとして、更正処分が行われた。

判決は、

①本件現物出資による原告への貸付債権の移転、
②本件貸付債権とこれに対応する債務の混同による消滅、
③本件新株発行及び原告法人の新株を引き受けることという複数の段階に分け、

②の混同については、資本金の増減は発生しないので資本等取引には該当するとは認められないから①ないし③の異なる過程を併せて全体を資本等取引に該当するものはできないとして、法人税法22条2項の規定の性質上、同項の「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲り受けは取引の例示であり、同項のその他の取引には、民商法上の取引に限られず、債権の増加又は債務の減少など法人の収益の発生事由として簿記に反映されるものである限り、人の精神作用を要件としない法律事実である混同等の事件も含まれると解するのが相当であるとした(東京地判平成21年4月28日、東京高判平成22年9月15日)。

[解説]

 国際金融資本は、投融資を行い、投融資先の現金留保を減少させ、現実には備わっていない低い属性を投融資先の架空資本に込め、投融資先の架空資本を安く購入し、架空資本に投融資したことを方便に当該架空資本に高い価値属性を込めて第三者に譲渡し、現金留保を蓄積する。資産を無償で贈与を受けたわけではない。

無償で債権の譲渡を行い、現実には対価を収受していないが、他に譲渡したとみなして収益が生じ、そこから投資を行ったというのは現実の経済関係からは乖離している。

債務の額は、時価であって、債務者は、株式を債務弁済として債権者に提供した。金融資本家は、担保物に自らの経済関係、生産関係、資本関係に基づいて価値属性を付与し、何等価値属性を備えていない担保物に価値属性を与え、担保物を獲得して譲渡するまでの過程を土台に時価を物象化して規定する。

何等価値の備わっていない実体に属性を付与し物象化をすることを更新し続ける過程にある取引時に、更新前に付与された価値に基づくことは、取引時における経済実体、経済関係、搾取のプロセスであり、搾取の源泉たる現金留保から乖離しているからである。貸付債権の時価が株式の取得価額である。貸付債権を低廉で譲渡したことにより、貸付債権の時価と譲渡価額の差額分の収益が投資した側に建って、その収益から金銭を贈与したのではない。

債権者が所有する債務者には、時価と券面額との差額分だけ債務消滅益が建つ。債権者は、株式を取得することにより、債権を回収したから、時価と券面額の差額は貸倒ではなく、寄附金となるが、債務会社の現金留保を所有するのであるから、現実には投資である。

債権者は、債権を免除し、債権者は、現金を投資することなく代わりに株式を保有したのであるから、有償譲渡である。

債権者は、現実には損失がないにもかかわらず、資本取引としてしまえば、債権者、債務者双方に損益が計上されないことにより課税を免れることとなる。 民商法上の混同も、混同の禁止も、法人税法22条2項の「資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲り受け」も、土台となる経済事実関係によって規定されるのであって、自由意思は存在しないから、人の精神作用は伴わない。混同も取引も自動や偶発ではなく、現象面のものとして把握されるものではない。

例については、ドイツ銀行のB社による債権譲渡について問題提起がされていないという問題もある。