[事実関係]

 原告不動産売買法人が旧法人税法施行令18条の5本文にいう負債利子の個別的累積的紐付き計算方式を適用して受取配当金の金額を計算して法人の所得を確定申告したところ、税務署長は、株式の取得に要した負債利子の控除に関して旧法人税法施行令但し書きによる、総資産按分方式によって計算した金額が合理的であるとして更正処分を行った。

判決は、

「企業経営の実情についてみるにおよそ法人がある事業を営む場合において、その事業経営に必要な資金を自己資金もしくは他人資本によって賄い、むしろその両者が混在しているのが通例であり、またこれらの資金は事業経営に必要な資産に化体されて、自己資金と借入金とは混然一体となって運用されているのが実情であり、このような実情のもとにおいて、個々の資産について、その取得に要した資金について、その出処を源泉に遡ってこれを探求し、その資金の入手とその資産の取得との関係を次期的に内容的に関連づけ分類づけ分類することは全般的な会計処理の態勢よりみて企業自体にとって煩瑣であり至難であることは創造に難くない。

これら所有の法人は、 そうだとすれば、但し書き及び細則に定める総体的按分計算の方式が、今日の企業会計及び会計処理の実情に即して合理性を有するものといわねばならない」とした(大阪地判昭和48年2月28日)。

 

[解説]

 不動産業の資本家を含め、産業資本家、劣後金融資本家の金融資本家との資本関係により、借入するしないに自由意思はない。

金融資本家との資本関係より、投融資を受けたことによる現金資産についてその使徒に自由意思はない。金融資本家とその他全資本家、中央銀行との間の既存の資本関係、資本家関係者内の生産関係を土台とする、投融資という経済関係、生産関係の反復継続により、現金は無記名で、各紙幣には手にした時点で手にした者の名が記されるわけではなく、その源泉が記されておらず、金融資本家は現金留保の蓄積に成功した。現金は、経済関係に基づいて流通させざるを得ず、所有される者がいない。

現金が無記名であることにより、資本家が自己又は取引先が所有する労働者からの搾取利得を利子払配当支払いの源泉としたのか、どこからの借入を原資を支払手段として用いたか、どこからの預金や送金を原資に第三者に投融資したかは証明しえないのである。

預金や送金をした現金が第三者に投融資されてしまった者が、第三者への投融資の原資が、自己が預金、送金した金であることを証明したり、借入れた者が、支払いの原資を証明したところで、それは、取引先や第三者からは後付けの方便であるとしかみなされないのである。

企業の会計処理の態勢の問題ではないのである。総資産按分方式による負債利子の規定を定めた当該但し書きは、金融資本が、社会に認めさせることに成功した貨幣の無記名と経済関係を土台とする所得計算プロセスを、他の資本家に認めさせることに成功した規定である。