東京国税局名義で、昭和38年5月に「民主商工会関係の動向を調査するように」と題する非公開の内部マニュアルが作成され、これに基づき、税務署長は、調査妨害のあったものについては十分な調査をなすべきこと、税理士資格のない民商事務局員及び同会員の立会いを排除すること、調査を行わない旨の事前通知を行わないこと、調査に赴く職員の人数は場合によっては二名ないし三名一組としてもよいこと、各署毎に調査すべき人数は予め標準の人数を示して右標準に従うこととするとされた。

税務署長の使用人には特段と呼ばれる民商担当官が設置されたと言われる。民商脱会指導のについても調査官の実績にカウントされた。

昭和48年1月に「税務調査の場での立会い要求は、納税者の当然の権利であるか」という冊子を作成し、税務署員が、第三者の立会いを拒む理由として、

調査に支障があるから、調査と直接第三者が立ち会うことは断る、納税者の同意があったとしても当方の了解なしに一方的に立会いを求める権利はないこと、

調査の場では、調査内容が取引相手先である第三者の秘密にわたることがあり、納税者の同意があるからといって、税務職員の意向を無視して、一方的に立会いを求める権利があるわけではなく、守秘義務もない第三者を立ち会わせることを安易に認めるこべきではないこと、

特定の団体に所属する納税者の調査において、団体役員や事務職員が憲法違反であるとかの税務調査と関係のない議論を持ち出したり、調査に応じようとする納税者の発言を封じたり、調査官個人を誹謗したりするなど、調査を妨害することが予想される場合は調査の実施上好ましく立会いを拒否しているが、これは税務行政上当然の措置であること、

団体職員や事務職員の場合、納税者の記帳についての補助的説明にとどまらず、税務の交渉にわたり、税理士法に抵触するおそれがあることを挙げる。

いずれも、「おそれ」「予想」といった実体のないリスクを第三者の立会い拒否の根拠としている。

当該冊子は、「当然」であるとか、「べき」であるとかの属性論ばかりで、拒否するに至った土台、プロセスの全てが説明されていないのである。

税理士法は、代理人として税理士資格のない者が税務上の主張ができないとあるだけで税理士法2条1項)、税理士以外の者の経済関係、生産関係を排除又は疎外してまで、法律を媒介にして調査の立会いを税理士の独占業務であるということを認めるに至っていないと解される。

現実には税理士資格を持たない税理士事務所の職員だけが立ち会って、税理士本人は調査の場に訪れない税理士事務所、税理士法人がある。判決は、質問検査権の行使が任意調査である以上、被調査者の依頼した第三者が立ち会うことに何等違法、不当なことはないとされるが(静岡地判昭和47年2月9日)、現実には調査を受ける受けないに自由意思はないから、任意調査なるものは存在しない。

納税者の同意云々は立会いを認めさせる根拠とはならないであろう。税務署長、生産関係にある職員にも調査するしないや調査方法に自由意思はなく、金融資本家との経済関係から調査するしない、調査の方法は規定される。

しかし、税理士を雇用する現金留保がなく、税理士以外の第三者に依頼せざるを得ない場合もある。納税者は、金融資本家との経済関係、資本関係からみれば、納税者は第三者の立会いを請求する権利は所有していない。

帳簿の土台となる経済関係の全てを把握して問題提起をして調査、事実関係の確定、法への包摂を確定して更正処分を行う義務があるから、第三者を立ち会わせて補足説明をさせざるを得ないことがある。

取引相手先第三者の秘密については、ここにいう第三者が公開法人であっても、資本家以外の顧客はいるから、当該第三者と全資本家の使用人である税務機関との資本関係、経済関係の有無に関係なく、税務職員、調査に立ち会った者の守秘義務は存在すると解される。

判決は、納税者が調査官の質問に答えることがその取引の当事者の秘密を漏らすおそれがあり、立会人のいる前でその説明をすることが不相当であると判断される場合には、その旨立会人らに告げてその段階で立会人の立ち退きを請求すべきものであろうとする(静岡地判昭和47年2月9日)。

納税者の取引先の秘密を漏らすことが質問前に確定していて、全ての事実関係に照らしてその説明をすると公人の属性を付与されていない者の経済関係を損失する場合には、質問前に立ち退かせる必要があると言えるであろう。