[事実関係]
旧A社が、平成17年4月1日から18年3月31日の連結事業年度の法人税につき、当期首の17年4月1日を合併期日と規定して吸収合併したB社の本件連結事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額を法人税法(平成18年法律10号による改正前のもの)81条9号の規定する連結欠損金とみなされる金額として損金の額に算入したが、税務署長がその損金算入を否認して更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行った。
合併に関する規定によれば、旧A社は、合併の日である4月1日の前日である17年3月31日であって、合併の日である17年4月1日には既に事業年度は存在いないことになる。
しかし、連結欠損金額に関する規定によれば、連結事業年度開始の日とした17年4月1日には旧A社は存在し連結子会社であったということになる。
法人税課税は、法人の所得を土台として行われる。法人の所得は決算利益を土台に計算される。時間という価値属性を経済関係変動のプロセスに付与すれば、合併の日である4月1日には、合併による経済関係の開始することを決定しているから、被合併会社であるA社は存在しない。すなわち旧A社は17年4月1日には連結子会社として存在していなかったということになる。
子会社であっても、金融資本家との資本関係により、留保所得、その土台となる現金留保を、子会社の自由意思なく、登記して法律上の所有、権利として全資本家、労働者、人民に認めさせることを成功させざるを得ないのであって、親会社と経済関係、資本関係、生産関係はあっても、親会社とは別個に実体として存在する。
最初の連結事業年度が開始する前の単体としての事業年度において生じた欠損金額は、連結欠損金の名目を与え、連結納税の基に持ち込んで、所得から控除できない。その例外として最初連結事業年度開始の日前7年以内に開始した当該連結親法人の各事業年度において生じた法人税法57条1項に規定する欠損金額(同条2項又は6項の規定により欠損金額とみなされたものを含み、5項又は9項の規定によりないものとされたものを除く)がある場合には、当該欠損金額について連結欠損金額とみなすとする(81条9項)。
判決は、81条9項を適用して、
「連結納税制度の適用の開始に際していわゆる納税単位が単体から連結法人に変更されるところ、このような場合には、単体としての事業年度における事業活動における各法人の所得については各法人毎に個別に課税するものとし、このような課税関係の生清算をした後に、連結納税制度の適用を受けるとするのが、制度の適用としては簡明であること、
単体としての事業年度において発生した欠損金額を連結事業年度における連結所得の金額に持ち込んで繰越控除をすることは、当然に連結法人のグループとしての事業活動による所得の実態に適合するとはいえず、いわゆる赤字会社を連結子法人とすること等による租税回避行為等を防止する必要があることなどを考慮する一方で、
連結親法人とそれによる完全支配関係がある連結子法人とから構成される連結法人のグループについては、全体としては当該連結法人の繰越欠損金については上記のような方法での租税回避の問題が生じないことなどを考慮したものと解される。
以上に述べたところによれば、連結親法人となる内国法人が適格合併をした場合において、当該適格合併に係る被合併法人にあった未処理欠損金額が同法81条の9第2項1号の規定により当該連結親法人に係る連結事業年度における連結欠損金額とみなされるためには、最初連結親法人事業年度開始の日よりも前に適格合併が行われて同法57条2項の規定により当該連結親法人の欠損金額とみなされていたことを要するというべきである」とする(東京地判平成21年11月27日)。
[解説]
57条9項は、「次の各号に該当する場合には、第1項の内国法人の当該各号に掲げる事業年度における同項の規定については、当該各号に定める欠損金額の適用がないものとする」とし、同条項2号において、「連結子法人である当該内国法人が最初の連結親法人事業年度において当該内国法人を被合併法人とする合併(当該内国法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を合併法人とするものに限るものとし、次に掲げるものを除く。)を行った場合の当該合併の日の前日の属する事業年度当該事業年度前において生じた欠損金額」とし、同条項同号のイにおいて、「最初連結法人事業年度開始の日に行う合併」を挙げる。
金融資本家は、労働を疎外し、稼得した経済利益と搾取の土台となる現金留保に関係なく、投融資を行い、破産させ、安く購入し、所有する全資本家に投融資させ、高い価値属性を証券に込めて譲渡し、現金を獲得し、手元に現金に所有せずに、獲得した現金で投融資を行い、利子配当名目で労賃から搾取を行い、留保現金を蓄積する。
金融資本家との資本関係により、全資本家は、連結欠損金とみなして所得から控除することを受け容れることに応じることをせざるを得なくさせられた。
この特例により金融資本家は現金留保を蓄積し、投融資を続け、搾取を継続する。内国法人と特定資本関係との間で内国法人を合併法人、分割承継法人又は被現物出資法人とする適格合併、適格分割又は適格現物出資以下適格合併等という)が行われ、且つ、当該特定資本関係が当該適格合併等の日の存在する事業年度開始(以下、合併等事業年度という)の日の5年前の日以後に生じさせざるている場合において、当該適格合併等が共同で事業を営むための適格合併等として政令に該当しないときは、当該合併等事業年度以降の各事業年度においては、特定資本関係を生ぜじめた日が存在する事業年度前の各事業年度で前7年内事業年度に該当する事業年度の欠損金額を57条1項の当日欠損金とはみなさないとしている。
被合併法人と合併法人の間において、一方の法人が他方の法人の発行株式等の全部を直接又は間接に所有していること、合併前後を通じて同一の者、同一の者が個人である場合には当該個人及びその特殊関係のある個人が各々の法人の発行株式等の全部を直接又は間接に所有していることといった適格合併の要件と57条5項の要件を満たしているとの方便、共同の事業を行うためとか異なる目的かという実体のない目的により後者であることを認めさせれば、欠損金の繰越控除ができてしまう。
産業を行わないアメリカ金融資本家が所有する持株会社は繰越欠損金を引き継げてしまうのである。合併の日の当日に制度上の空白ができたと言われるが、アメリカ金融資本家と全資本家との資本関係を土台に成立した現金留保蓄積プロセスを土台に、予め、時間という属性を全取引のプロセスに込め、全ての法律の適用されないと解する属性を、合併の日という1日に込めて法を創設したのであって、制度的な断絶があったわけでもなければ、落とし穴があったわけでもなければ、立法の瑕疵でもない。
判決は、連結親法人とそれによる完全支配関係がある連結法人グループは、全体として当該連結親法人の実像を示しているという現象面からの事実関係の把握を肯定していること、租税回避の意図は実体がないが、租税回避の土台となる経済があるから問題提起が成立しないと考えるのは問題である。上記のような方法での租税回避の問題が生じないとするが、実像と内国法人が、適格合併を社会に認めさせたことによる被合併法人の合併の日前7年以内開始事業年度の欠損金を控除し、合併の日の存する事業年度の翌事業年度又は、判決は否定したが、合併の日を最初連結事業年度開始の日と規定して、合併法人とは別の、現象面からはわからないアメリカ金融資本家が所有する内国法人が、被合併法人の単体事業年度に生ぜじめられた欠損金を、連結欠損金として持ち込むことを日本に所在する全資本家を使用して法により認めさせてしまっているのである。
また、金融資本家は、被合併法人を、その架空資本に高い属性を付与することなく、譲渡して、譲り受け先に投融資を受けさせ、所得計算上、二重控除を受けることと利子配当により現金留保を蓄積することもできてしまうのである。