平成24年税制改正において設けられた国外財産調書制度については、税務通信3241号によると、投資目的で国外に金融資産、不動産を所有している日本人のみが対象となるとする見解が存在するという。
しかし、目的とは実体のないものであって、資産には投資目的、売買目的といった属性は備えておらず、売買目的との方便をもって、金融資本家、産業資本家は、当該資産を所有し続け投資し続けることができる。投資目的を持った者のみを調書提出することと解することは、オフショアに現金資産、架空資本、不動産を所有する金融資本家、産業資本家に逃げ口上を与えるのである。国外財産の調書の提出は、金融資本所有の課税当局側から請求がなくとも、所有者側に提出義務があると解さなければならないであろう。
日本に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する外国人においても調書の提出が求められることがある(国外送金等調書法5①)。「ことがある」の文言は、制度の土台、経緯に鑑みれば、行政側に求める義務があると解すると読むことができるとする見解が存在することが考えられるが、行政側に求められるか否かに関係なく提出する義務があるとしなければ、金融資本と金融資本に所有された国家との資本関係、経済関係、生産関係に鑑みれば、オフショアに所有する資産の申告を免れてしまうであろう。 現実に金融機関は、劣後金融資本、産業資本、労働者、人民の資産については、金融資本家から、金融資本家に雇用された課税行政職員に資料提供に応じさせられるが、オフショアを所有する金融資本家の資産については営業上の秘密という逃げ口上により、資料の提供には応じられないと言わざるを得なくさせられている。