[事実関係]

<p> 同族会社を営む審査請求人が、前代表取締役及びその夫である取締役の退職給与を損金算入したところ、原処分庁は、請求人の本件事業年度の法人税について両者に対する役員退職給与として相当である金額は、請求人と類似する法人が役員に支給した金額を当該役員の退職時における最終報酬月額に勤続年数を乗じた金額を除した功績倍率は2.2を基に本件各役員の退職金を算定した金額と認定し、当該金額を超える金額が法人税法第36条に規定する不相当に高額な部分に当たるから、所得金額の計算上損金に算入できないとして更正処分を行った。

審判所は、原処分庁が選定した比較法人4社の内、1社は資金繰りのために役員退職金規定に定められた功績倍率より低率の功績倍率に基づいて算定した退職給与を支給したという特殊事情があり、実際に支給された金額も当該法人を除外した3社よりも大幅に低いことから比較法人を3社として、功績倍率を算定するのが相当であるとして、平均功績倍率は1.9であること、当審判所の調査によっても、上記の平均功績倍率を本件に当てはめることが相当性を欠くと認められるというほどに、退職両役員が請求人への貢献度が高かったことを裏付ける事情は認められないとし更正処分を維持した(平成19年11月15日裁決)。</p>

[解説]

<p> 退職金の算定は、現実には、月額給与と同じく、現実の労働を疎外し、既存の、経済関係、生産関係、その土台、原因である現金の源泉すなわち資本関係に基づいて、交換取引前に価値属性を商品役務に込めてそれを物象化し利息配当の原資を確定するというプロセスを経て、平均月額給与又は最終月額給与を土台に功績倍率がいくらであれば、利息配当の原資プラス準備金がなくならないかという推論により搾取されて確定される。

当該法人の資本家又は全資本家を所有雇用する金融資本家が功績倍率による退職金の決定をすることも、疎外された労働に実体のない価値属性を込めてそれを物象化することである。比較法人と当該法人の各々の生産関係、資本関係すなわち株式所有関係、融資関係、経済関係が全く同じであるということは成立し得ない。

代表取締役と取締役が同じであるのは不自然であるという納税者側の主張は、リスクや責任という実体のないものや地位という属性付与に基づいて、自然不自然という宗教を使用して現実に行ってきた生産関係を疎外するものである。

裁決は、創業以来の役員であるかどうかなどの名目だけでなく会社への実際の貢献度等の実質も考慮されるべきところとする。

功績倍率の土台は、当該生産関係において、退職者が実質ではなく、貢献ではなく、現実に行ってきた労働、勤続期間内の月額報酬が、労働を疎外されてきたものであること、現実の月額給与の支給が、当該経営者属性を付与されている場合を含む労働者と資本家、生産関係上の全事実関係からすれば低額であったこと、資本関係、経済関係、生産関係により、法人資本家に前貸しせざるを得なかったことである。 </p>