[事実関係]

 宗教法人、旅館業、食品業をはじめ31社を経営する個人Xが、同人のグループ内のラブホテルは、旅館業を行う法人が行っているものとしてラブホテルの土地、施設の所有者である宗教法人の収益事業からラブホテルの損益をしたことにつき、税務署がこれを仮装隠蔽に当たる行為として更正処分を行わせられ、裁判所もこれを適法とした事例がある(東京地判平成24年9月4日)。

[解説]

 税務当局側は、法人税の納税義務者は、事業収益の帰属主体であり、その帰属主体は法律で判断されるが、その者が単なる名義人であるときは、実質的にこれを享受する者に課税されること、一般的には、帰属主体イコール経営者であり、帰属主体の判定には、事業所を巡る権利義務関係を総合勘案する必要があり、宗教法人がホテルの施設及び土地を所有していると主張する。

裁判所は、納税義務者は実質的に損益が帰属する主体と解され、当該事業の経営方針の決定や収益管理の状況、当該事業に必要な資産を巡る権利関係、当該事業に関する従業員の雇用関係、対外的な表示等を総合勘案し、実質的、客観的に見て経営主体は誰であるかを基準に判断すべきとして、ホテルの経営方針決定の権限は個人であり、ホテルの使用権限を有しているのは宗教法人であり、従業人に関する雇用関係は不明確であるとし、ホテル業法人は営業許可を受けているが経営主体ではなく、営業許可を受けていなくともラブホテル運営は可能であることを基準に挙げる。

収益に人が従属すること、経営者は労働者であって所有云々の問題は成立しえず、収益に.所有されるのは、税務署のいう経営者ではなく、投融資を行う株主、債権者である。商法上の経営者と株主が同一である場合には株主である。

所有関係の上層にある経営権、施設使用権、雇用に関する権利も投融資を行う者が所有する。本件株主は、宗教法人も旅館業も所有し、両法人は法律上の実体を社会に認めさせていること、持ち手を変える現金は、金融資本家、中央銀行、株主の投融資を源泉として法人の口座又は個人の口座に預けられ、金融資本家によって第三者に投融資される。全ての経済関係、生産関係、管理というよりは所有関係、その上層の権利義務関係の全てを勘案して当該収益に規定される者が誰であるかということになる。

いずれの関係も個人Xが所有し、個人Xに所有されている法人の内、裁判所は、搾取の源泉である現金から、収益の還流までのプロセスの内、土地、施設の法律上の所有者が宗教法人であり、宗教法人が得た経済利得を土地所有登記と法人登記を媒介に法律上の権利という名目を社会に認めさせたことから、宗教法人が納税者であるとしたと見ることができる。