[事実関係]
精密部品製造会社の役員が出資して設立したシンガポール販売法人がタックスヘイブン対策税制上の特定外国子会社に該当するとして、シンガポール法人の課税対象留保金額を当該役員の平成16、17、18年分の雑所得に含むべきとして行われた更正処分につき、
裁判所は、
実体基準の充足には、事務所を所有していることは必要ではなく、賃借でも認められ、その規模は業種、業態により判断するとし、
管理支配基準の充足については、従業員等が存在し(親会社以外からの第三者からの派遣を含む)、親会社から独立した意思決定が行われていること等を勘案するとした上で、シンガポール法人と同法人を支援する法人との業務委託契約書に契約内容が正確に記載されていない可能性が高い上、当時子会社支援事業が開始されたばかりで、サービス対価を定めた上で、業務委託報酬を算定する方式にはなっておらず、業務委託報酬に賃借料が含まれていたと認められること、
シンガポール法人を支援するとする法人の営業担当者が、シンガポール法人に派遣され、シンガポール法人の指揮監督を受けていること、
シンガポール法人は小規模法人で机1台分のレンタルスペースで足りること、大株主である当該役員(99%所有)は出席していないが株主総会がシンガポール法人で行われていることにより、
課税当局側の主張を斥けた(東京地判平成24年10月11日税務通信3238号(平成24年11月19日))。
[解説]
当該役員すなわちシンガポール法人資本家に経済利益、所得があることの事実確定しているが、シンガポール法人と支援法人との業務委託について、いかなる業務を委託したかの問題提起の全体化がなされているようには思えず、派遣元における生産関係、発注法資本家人と派遣元との経済関係、生産関係からみれば、発注法人資本家に派遣社員を指揮監督する権限を法律上所有しているということは成立しえず、シンガポール法人が派遣社員を指揮監督するという関係が法律上あったのかの問題提起が行われていないように思える。資本経済において、資本家と法人との資本関係、経済関係、生産関係からみれば、法人において自由意思というものは所有していない。法人の実体の有無について、法人の意思の有無が要件となるとは思われない。地裁判決は、机一台であるとか、株主総会の有無という現象面、外形上だけでシンガポール法人の実体があったと判示しているように思われるのである。